第一次大戦終結100年式典 米欧の亀裂を印象づけた - 毎日新聞(2018年11月13日)

https://mainichi.jp/articles/20181113/ddm/005/070/210000c
http://archive.today/2018.11.13-002858/https://mainichi.jp/articles/20181113/ddm/005/070/210000c

国際協調をアピールする狙いとは裏腹に、米欧の亀裂と対立を印象づける場となったようだ。
第一次世界大戦終結100周年記念式典がパリで開かれた。主催したマクロン仏大統領は演説で、世界で高まるナショナリズムについて「古い悪魔が再び目覚めつつある」と述べた。また、自国第一主義が「国家にとって貴重な道徳的価値観を失わせる」とも説いた。
「米国第一主義」や各国の孤立主義を意識し、警鐘を鳴らした発言と受け止められている。
マクロン氏は今回、台頭するナショナリズムに対抗する好機だとみて式典を設けた。米国のみならず、足元の欧州でハンガリーやイタリアなど自国第一主義の国が増え、極右政党が躍進していることへの危機感もある。
ところが、トランプ米大統領は会場入りする際、ともに歩いた他の首脳たちとは別行動を取った。さらにマクロン氏が発案した「パリ平和フォーラム」は欠席した。相変わらずの単独主義的な行動だった。
米仏間は首脳会談を通じてもぎくしゃくしたままだった。マクロン氏が事前に、米国に頼らない「真の欧州軍」構想を説いたことに、トランプ氏が「非常に侮辱的だ」と反応するなど、むしろ米欧の不和があらわになった。
第一次大戦は膨大な犠牲者を出し、戦後に米国が提唱した国際連盟が創設された。だが、肝心の米国は国内の反対で参加しなかった。その結果、各国は自国優先の行動へと進み、約20年後には第二次大戦に突入した。国際秩序を維持すべきだという教訓は生かされなかった。
第二次大戦後、米国は国連や多国間枠組みの中心的存在を常に務めてきた。しかし、トランプ氏の方針転換のため役割はかすみつつある。
100年前の状況と現在を単純に比較することはできない。だが、ナショナリズムの兆候を重ねて見る向きもある。米欧の連携は国際秩序の維持のために不可欠である。
平和フォーラムで、グテレス国連事務総長は「妥協する精神が弱まり、共同体のルールが軽視されている」と世界の現状を嘆いた。国際協調の精神が危機にあるという認識にほかならない。