(余録)原爆の実相を伝える広島平和記念資料館は… - 毎日新聞(2018年8月23日)

https://mainichi.jp/articles/20180823/ddm/001/070/153000c
http://archive.today/2018.08.23-095627/https://mainichi.jp/articles/20180823/ddm/001/070/153000c

原爆の実相を伝える広島平和記念資料館は本館が改修中で、東館だけ開いている。今月訪れたら、広島市中心部が原爆投下で崩壊する経過を、CG動画で立体的に見せるなど展示の仕方が様変わりしていた。
分かりやすいが、ハリウッド映画並みに整いすぎているような気もする。何度か見ると、自分が米軍爆撃機の乗員になったみたいで落ち着かない。子供は核兵器を怖がるより、どこか面白がっているふうだった。
本館再開後は、これまでの代表的な展示だった被爆再現人形も消える。計画には「観覧後の心情に配慮した空間を整備します」とある。1960年代に、被爆実態と原子力平和利用の展示併設が論議になったこともあった。
「8月ジャーナリズム」とは、広島・長崎への原爆投下と終戦の日に合わせ、戦争を回顧する報道が集中する現象をいう。皮肉も混じる表現だが、毎年同じ時季に史実を振り返る習慣には価値があると信じよう。
むしろ、戦争の見方・聞き方がマンネリ化する方が怖い。見せ方・語り方に正義をまとった一種の押しつけが生じやすく、結局は戦争への関心を遠ざける。とはいえ、それは後世代の視点や感情に迎合することとも違うだろう。
戦後73年の今年、ジャーナリズムの関心は平成最後の8月という点に集まった。30年の積み重ねは重い。同時に今年の節目は、8月が過ぎた後への宿題を残した。戦争を経験した人たちがいよいよいなくなる時、戦争との向き合い方は新たに創造しなくてはならないからだ。