公文書管理法 国民の知的資源にせよ - 東京新聞(2018年8月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082102000169.html
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公文書をあえて作成しない。そんな官僚の風潮に拍車をかけかねないのが、政府の改ざん再発防止策である。公文書の役目は「国民共有の知的資源」である。責任逃れを許さぬ透明性が必要だ。
とにかく行政機関の文書については、でたらめがまかり通っている。学校法人「森友学園」問題での財務省の決裁文書ではおびただしい改ざんがあった。「加計学園」問題では、「総理のご意向」と書かれた文書は怪文書扱いされた。自衛隊では国連平和維持活動(PKO)での「戦闘」の文字のある日報を大臣に報告しなかった。隠蔽(いんぺい)である。
大きな社会問題化したため、政府は再発防止策をまとめた。公文書の改ざんや組織的な破棄など悪質な例は、免職を含む懲戒処分を科す。決裁文書の事後修正は認めない。修正が必要な場合は、新たな決裁を取り直すことを明文化した。いずれも当然のことだ。
また、職員研修をし、公文書管理への取り組みを人事評価に反映する。監視体制の強化としては内閣府の独立公文書管理監を局長級に格上げし、全府省庁の管理状況を常時監視させるともいう。各府省庁にも「公文書監理官」を新設し、同時に不正行為の通報窓口も担う−などという内容だ。
だが、この防止策は効果的だろうか。大いに疑問を持つ。なぜなら、懲戒処分を恐れて、公務員はあえて公文書としない方向に走る恐れがあるからだ。「大事なことは口頭で」などという慣例ができるかもしれない。
公文書とは公務員が職務上作成した文書をいう。また組織的に用い、行政機関が保有しているものでもある。ただ、公務員の判断により、組織的に用いても、私的メモ扱いの文書もある。法に照らせば、政策決定にかかわる私的メモはむろん行政文書にあたり、本来は原則公開すべきなのだ。
しかし、行政機関は私的メモが「公式のものでない」と独善的な解釈をして廃棄も可能としている。何が公文書なのか、まず定義の徹底をすべきではないのか。
そもそも公文書は行政機関の意思決定のプロセスを後に国民が検証できるようにする意義がある。公文書管理法も「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」ためと記す。民主主義の基盤なのだ。
その精神を公務員が胸に刻まない限り、国民の存在を忘れ、文書隠しや公開拒否など論外の行動が横行する。