参院選挙の改変 民主主義の土台壊すな - 東京新聞(2018年7月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018071102000186.html
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政権与党の傲慢(ごうまん)さが極まったのではないか。自民党が今国会成立を目指す参院選挙制度改革案。民主主義の土台である選挙制度を、自党の都合を優先して強引に変えることが許されてはならない。
これほど露骨な選挙制度の改変が、かつてあっただろうか。自民党が提出し、参院政治倫理・選挙制度特別委員会で審議されている公職選挙法改正案である。
参院議員定数を埼玉県選挙区で二(三年ごとの改選数では一)、比例代表で四(同二)増やし、比例代表の一部に、各党が定めた順位に従って当選者を決める「特定枠」を導入する内容だ。
一票の格差」是正のための定数増を一概には否定しないが、依然、三倍近い格差が残る。
特定枠は提案した自民党の動機がそもそも不純だ。二〇一六年の前回参院選から「合区」が導入された「鳥取・島根」と「徳島・高知」両選挙区で公認に漏れた現職議員を比例で救済する狙いだからだ。自党の議席維持を優先する党利党略と批判されて当然である。
国会は三年前の前回改正で、一九年の参院選に向けて「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」と改正法の付則に明記し、抜本改革を約束していた。
最高裁が前回一六年参院選での格差三・〇八倍を「合憲」と判断したのも、抜本改革という国会の意思を評価したためだろう。
国会は、国民との約束である抜本改革を怠ったばかりか、司法判断をも顧みない高慢さである。
伊達忠一参院議長も役割を果たしたとは言えない。野党側が求めていたあっせん案の取りまとめを拒み、各党に法案提出を促し、審議するよう求めただけだからだ。
確かに、選挙制度をめぐる各党間の隔たりは大きく、意見を集約し、各党が受け入れ可能な案を提示するのは容易ではない。
しかし、困難な仕事に取り組んでこその議長ではないか。数に勝る自民党案の成立を容認するだけでは、三権の長としての責任の放棄にほかならない。
自民党はきょうにも参院特別委で可決し、二十二日までの会期内成立を図る構えだが、民意を正しく測るための選挙制度を幅広い合意もなく、拙速に決めてはならない。
審議を通じて各党案も明らかになった。自民党案の今
国会成立は見送り、秋の臨時国会で仕切り直しすべきだ。周知期間は短くなっても、真剣な議論の末での結論なら、有権者の理解も得られる。