朝鮮半島非核化声明 新基地の必要論崩れる - 琉球新報(2018年6月13日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-737471.html
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トランプ米大統領北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長は、初の首脳会談を開いた。
正恩氏は共同声明で南北首脳による板門店宣言を再確認し「朝鮮半島の完全非核化」を約束した。トランプ氏は非核化に向けた対話継続中は、米韓軍事演習を中止する意向を示した。在沖米軍も参加する演習中止は、朝鮮半島の緊張緩和につながる。
米朝首脳会談を機に朝鮮半島に残る冷戦構造が解体へ向かう一歩とすべきだ。
今回の米朝首脳会談の最大の焦点は、米国が求める完全で検証可能、不可逆的な非核化(CVID)を北朝鮮に認めさせるかだった。
共同声明に盛り込まれなかったが、トランプ氏は「(非核化へ向け)揺るぎない決意を示した」と強調。非核化プロセスを迅速に始めることを明らかにした。
非核化を巡っては米朝の思惑には隔たりがある。米国はCVIDを求め、北朝鮮は米国に段階的なアプローチを望む。トランプ氏は「完全な非核化には時間がかかる」との見方を示した。今回の会談は非核化に向けた入り口にすぎない。
トランプ氏は非核化と並んで60年以上休戦状態にある朝鮮戦争終結合意を検討していると明言していた。共同声明が実現したことで、東アジアに新しい秩序が構築される可能性がある。
朝鮮戦争終結すると、在沖米軍基地に大きな変化をもたらす。
嘉手納基地を中軸とする沖縄の米空軍は、朝鮮戦争と深く関わっていた。嘉手納基地、米軍普天間飛行場、ホワイトビーチ地区は、在日米軍だけでなく朝鮮戦争時の国連軍基地でもある。
朝鮮戦争終結すると、沖縄に国連軍基地はなくなり、北朝鮮の攻撃対象から外れる。政府はこれまで北朝鮮を「脅威」とし「抑止力」として在沖米海兵隊の存在意義を主張してきた。朝鮮半島に平和が訪れれば脅威の前提が崩れる。普天間飛行場を維持し続けることや、名護市辺野古への新基地建設は大義名分を失い、必要なくなる。
にもかかわらず政府は国内外の関心が米朝首脳会談に集まった12日、8月17日にも土砂を投入すると県に通知した。あえてこの日を選んだのではないかと疑いたくなる。
東アジアで生まれつつある変化を敏感に感じ取れば、平和共存の枠組みづくりに水を差すような新基地建設は中止すべきだ。日本が注力すべきは新基地建設ではなく、米中韓ロなどとともに、朝鮮半島の非核化を実現することだ。
一方、日本人拉致問題についてトランプ氏は北朝鮮に提起したことを明らかにし「今後取り組んでいく」と述べた。この間、拉致問題について日本側の戦略と具体的な取り組みが見えず、米国頼りになっている印象が拭えない。日本は解決に向け、主体的に取り組むべきである。