自衛隊明文化「改憲の十分な理由」 首相、施行期限には触れず - 東京新聞(2018年5月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018050402000138.html
https://megalodon.jp/2018-0504-1024-55/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018050402000138.html

安倍晋三首相(自民党総裁)は三日、改憲派の民間団体が東京都内で開いた集会にビデオメッセージを寄せ、自衛隊を明記する九条改憲案について「命を賭して任務を遂行している者の存在を明文化することで、正当性が明確化される。憲法改正の十分な理由になる」と強調した。一年前の同じ集会では、自衛隊明記のほかに、二〇二〇年に新憲法施行を目指す意向も表明したが、今年は具体的な期限には触れなかった。
集会は「民間憲法臨調」(桜井よしこ代表)などが主催した「公開憲法フォーラム」。昨年は、首相がビデオメッセージで、憲法自衛隊を明記し、二〇年の施行を目指す意向を初めて示した。自民党は首相の意向を踏まえ、今年三月に改憲四項目の条文案をまとめた。
今年の集会では、首相は「自衛隊違憲論が存在する最大の原因は、憲法に防衛に関する規定が全く存在しないことにある」と指摘。自衛隊明記の改憲に十分な理由があるとの発言は、野党や専門家などから「改憲の必要性が乏しい」と批判を受けたことが念頭にあるとみられる。
ビデオメッセージは七分弱で、文字数は約千五百字。九分超で、文字数も二千字近かった昨年より短かった。

◆首相メッセージ要旨 「1年間で議論は大いに活性化。喜ばしい」
憲法はこの国のかたち、理想の姿を示すものだ。二十一世紀の日本の姿を私たち自身の手で描く精神こそ、日本の未来を切り開く。現行憲法の基本理念が揺らぐことはない。一方で時代の節目にあって、どのような国造りを進めていくのかという議論を深めるべき時に来ている。
私は昨年のビデオメッセージで、自民党総裁として一石を投じる気持ちでこう言った。「いよいよ私たちが改憲に取り組む時が来た」「憲法九条に自衛隊を明記すべきだ」。この発言を一つの契機として、この一年間で改憲の議論は大いに活性化し、具体化した。大変喜ばしい。自民党では改憲四項目について議論が深まった。
残念ながら近年においても「自衛隊は合憲」と言い切る憲法学者は二割にとどまり、違憲論争が存在する。多くの教科書に、合憲性に議論がある旨の記述があり、自衛官の子どもたちもその教科書で勉強しなければならない。このままでいいのか。この状況に終止符を打つため、憲法自衛隊をしっかり明記する。それこそが今を生きる政治家の、自民党の責任だ。
憲法の専門家に自衛隊違憲論が存在する最大の原因は、憲法にわが国の防衛に関する規定が全く存在しないことにある。国の安全を守るため命を賭して任務を遂行している者の存在を明文化することによって、正当性が明確化されるのは明らかだ。国の安全の根幹に関わることであり、改憲の十分な理由になる。
いよいよ私たちが改憲に取り組む時が来た。主役は国民だ。最終的に国民投票によって国民が改憲を決定する。改憲を成し遂げるためには国民の理解、幅広い合意形成が必要だ。改憲に向けて共に頑張っていこう。