https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-702817.html
http://archive.today/2018.04.18-002416/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-702817.html
2004〜06年にイラクに派遣された陸上自衛隊部隊の日報は「存在しない」と虚偽の説明をしていた防衛省が日報を公表した。
「戦闘が拡大」「ボンという発射音とともに飛翔音を確認」「公共施設で爆発」など陸自が活動したサマワの状況は、活動を「非戦闘地域」に限定したイラク復興支援特別措置法に明らかに反する。
自衛隊の宿営地と周辺には十数回にわたりロケット弾や迫撃砲などによる攻撃があったことも分かっている。
だが、小野寺五典防衛相は17日の参院外交防衛委員会で「自衛隊が活動した地域は非戦闘地域の要件を満たしていると考えている」と述べた。明らかなイラク特措法違反を認識できない小野寺氏の下では、法にのっとった自衛隊の活動など期待できない。
陸自の活動地域が戦闘地域だったことを否定することは、部下である隊員を信頼していないということになる。「『ドアの閉まる音(着弾音に似ている)』にも反応するようになる」など、緊迫した状況に置かれた隊員の安全をも、小野寺氏は軽視していることになる。
航空自衛隊もイラク特措法に基づき、04〜08年にクウェートを拠点にイラクへの輸送活動を展開した。名古屋高裁は08年、空自のイラク派遣を「国際的な武力紛争の一環として殺傷や破壊行為が行われたバグダッドは、イラク特措法にいう『戦闘地域』に該当する」として、イラク特措法違反と判断した。
空自だけでなく陸自のイラク派遣も、イラク特措法を逸脱していたことが日報によって明らかになった。
政府にとって不都合な事実を隠蔽(いんぺい)した組織のトップとしての小野寺氏の責任は重大であり、速やかに辞任すべきである。安倍晋三首相の任命責任も看過できない。
防衛省は昨年2月の国会で野党側に日報の存在を否定したが、昨年3月に陸自で見つかっていた。その事実を1年以上も隠していた。イラク特措法に反していたことが問題化するのを避けるため、組織的に隠蔽した可能性がある。
政治が軍事に優先するシビリアンコントロール(文民統制)は民主主義国家の基本原則である。それが機能不全に陥っているのは明白だ。極めて深刻な事態であることを国民も認識する必要がある。
政府は日報公表により、情報公開への積極姿勢をアピールしたいようだが、日報には「欠落」や「黒塗り」が目立つ。情報公開には相変わらず後ろ向きで、防衛省の隠蔽体質は一向に改善できていない。イラク派遣期間の全日報の完全公開を強く求める。
自民党は安倍首相の意向に沿って自衛隊の存在を明記する憲法改正条文案をまとめ、他党と協議に入りたい意向である。だが、自衛隊の活動の全容を明らかしない安倍政権下での改憲論議など断じて認められない。