陸自イラク日報 派遣の正当性検証せよ - 東京新聞(2018年4月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018041802000136.html
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イラクに派遣された陸上自衛隊部隊の日報には「戦闘」の記述が複数あった。活動は憲法九条に基づいて非戦闘地域に限定されていたはずだ。派遣の判断が妥当だったのか、検証する必要がある。
開戦から十五年あまりが経過したイラク戦争。当時のブッシュ米政権は、生物・化学などの大量破壊兵器を開発・保有するイラクの脅威から、米国や国際社会を守るとしてイラク攻撃に踏み切った。
しかし、大量破壊兵器は見つからず、米国では超党派の独立委員会が中央情報局(CIA)などの情報機関による分析を「完全な誤りだった」とする最終報告書を大統領に提出している。
有志連合として参戦し、二百人近い犠牲を出した英国、大規模戦闘終了後、治安維持目的で派兵したオランダでも、独立の委員会がつくられ、派兵の是非をめぐる検証が行われた。
これに対し、日本ではイラク戦争をめぐり本格的な検証が行われていない。外務省内で文書調査や職員の聞き取りが行われたが、報告書の要旨が発表されただけで、全文は非公表のままだ。
そもそも、誤った情報分析で突入したイラク戦争を「支持」した当時の小泉政権の判断や、「戦闘が拡大」と分析される地域への自衛隊の派遣が妥当だったのか。
政府は二〇〇三年七月に成立したイラク復興支援特別措置法に基づいて〇四〜〇六年に陸自部隊延べ約五千五百人を南部サマワに派遣。医療指導や給水、学校など公共施設の整備に従事させた。
この活動は「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、活動の期間を通じて戦闘行為が行われないと認められる」いわゆる「非戦闘地域」に限定されていたが、日報には英国軍と武装勢力との間で銃撃戦があり、戦闘が拡大したことなど「戦闘」の記述が複数あった。
小野寺五典防衛相は「自衛隊の活動は非戦闘地域の要件を満たしていた」と述べたが、派遣の正当化に前のめりになっていないか。
安倍政権は安全保障関連法の成立を強行し、海外での自衛隊活動の枠を広げた。
自衛隊による人道的な国際貢献は必要だとしても、海外での武力の行使を禁じた憲法九条を逸脱することは許されない。
海外での自衛隊活動をむやみに拡大しないためにも、イラクへの自衛隊派遣に関する情報を公開して、政府判断の妥当性を検証し、教訓とすべきだ。政府と国会双方に真摯(しんし)な対応を求めたい。