http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/208422
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90年間続けた国の強制隔離政策で家族から引き離されたハンセン病回復者に、実際の結婚式を見せたい−。名護市の沖縄愛楽園で先月、職員同士の結婚披露宴が盛大に催された(1月30日付)
▼カップルは宮城雅人さん(32)と岸本春菜さん(29)。親身な仕事ぶりで人気の2人に、入所者は後遺症で指が失われた両手を懸命にたたいた
▼2001年の国賠訴訟違憲判決で国が謝罪したため、ハンセン病を「過去の問題」とする無関心が広がっている。だが昨年出された長編漫画「麦ばあの島」(すいれん舎、全4巻)を読み、終わっていないと思い知らされた
▼子どもたちに読んでほしいと願った作者・古林海月さんの筆致は柔らかい。過剰な描写はなく物語は淡々と進む。それゆえ患者が受けた差別、堕胎や断種の痛みが胸に迫る
▼引き裂かれた家族の、その後の人生も描かれる。濃密な共同体の中で見せしめのように家中を消毒され、住む所を追われ、離散、自殺まで。元患者の遺品引き取りを拒む家族は言う。「世間の目の恐ろしさ。療養所で暮らしてた人には分かりません」
▼今、熊本地裁でハンセン病家族訴訟が進行中だ。国に謝罪を求める家族は568人に上る。関心を持とう。身内の結婚式にも出られなかった悲劇を繰り返さないためにも。新たな差別を再生産しないためにも。(磯野直)