(ハリス米司令官発言)軍人の論理 住民軽視だ - 沖縄タイムズ聞(2018年1月12日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/194189
https://megalodon.jp/2018-0112-0938-41/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/194189

軍にとっての「安全」が、住民が求める「安心・安全」とは大きくかけ離れていることを改めて思い知らされた。
ハリス米太平洋軍司令官は、県内で年明けに米軍機の不時着が相次いだことに対し、「一番近い安全な場所に(機体を)降ろす措置に満足している」とパイロットをたたえた。米ハワイ州で開かれた会談で、「住民の安心のため安全な航行をお願いしたい」と要請した小野寺五典防衛相への返答だった。
機体の異常を感じながら飛行を続けるよりは、基地外であっても着陸した方が米軍機にとっては安全−という見方で、住民側の視点が全く欠けている。
米軍普天間飛行場所属のUH1多用途ヘリが6日不時着したうるま市伊計島の海岸は、民家から約50メートルと近く、前日には住民がタコや貝を捕りに出ていた。2日後、同じく普天間所属のAH1攻撃ヘリが不時着した読谷村の産業廃棄物処分場は、搬入車が行き交う場所。観光客でにぎわうホテルや、農家が通う畑も隣接する。
どちらも着陸すれば、住民が巻き込まれる危険性が高い場所だ。人身被害がなかったのは単なる偶然にすぎない。
翁長雄志知事は、今回のハリス氏の発言が、2016年名護市安部の海岸にオスプレイが墜落した際のニコルソン四軍調整官の発言と重なると断じた。集落からほど近い浅瀬で機体が大破した事故をニコルソン氏は謝るどころか、「できるだけ沖縄の人たちを守るために浅瀬に向かおうとしたことは良い判断だった」と称賛した。

■    ■

事故を過小評価する米軍関係者の見解は、復帰前から変わらない。
2004年沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落では大学校舎が燃え、周辺の住宅や車両破損の被害が出たにもかかわらず、ワスコー在日米軍司令官(当時)が「ベストな対応」と発言した。
1959年の宮森小学校への墜落は、児童ら228人が死傷したにもかかわらず、パイロットや米軍当局者は「事故は予測不能だった」とし、「(人口の多い)コザは危うく避けた」と功績をアピールした。
だが、宮森小への墜落から40年後に公開された米軍資料によると、墜落の原因はエンジンの整備不良やパイロットの技量不足によるものだった。墜落は人災であり、未然に防げたのだ。

■    ■

昨年10月、CH53大型輸送ヘリが東村高江の民間牧草地で炎上した事故は記憶に新しい。人的被害こそなかったが、牧草が数百メートル四方にわたって燃え尽きたほか、ヘリに搭載していた放射性物質漏れも問題となった。
実は牧草地には、1990年代から2度米軍ヘリが不時着していたことが後に分かった。炎上事故の前に、トラブルが続いていたのである。
発生した事故やトラブルを軽視することが、おざなりな再発防止策へとつながり、次の事故を招いていないか。日本政府は通り一辺倒の要求で済ませず、ハリス氏の発言にも強い異議を唱えるべきだ。