生活保護減額 最低限を支えているか - 東京新聞(2017年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000161.html
https://megalodon.jp/2017-1220-0938-23/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000161.html

生活保護のうち食費・光熱費などに充てる生活扶助は来年度から段階的に減額される。利用者の生活を支えられるのか。そもそも基準の決め方が実態に合っているのか、疑問が残ったままの改定だ。
「もうこれが限界ではないか」 保護基準の見直しを検討していた厚生労働省の審議会委員から、その手法に対しこんな声が続いた。保護基準の決め方を根本的に考え直す時機が来ている。
制度は憲法二五条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するためのものだ。五年ごとに基準を見直している。
まず最低限度の生活を支える基準を決め、給付額を定めるのが自然な考え方である。だが、現状では一般の消費動向など相対的な比較で基準の増減を決めている。一九八〇年代からこの手法だ。
比較するのは低所得層の消費動向である。この中には本来、保護を受けられる状態の人も多い。制度を利用できる人のうち、実際に利用している人の割合は二割程度といわれる。そうなると保護基準の方が高くなる場合が多く、いきおい引き下げられることになる。
低所得者への経済支援は別途必要だが、前回の基準見直しで生活扶助は平均6・5%減額された。各地で訴訟にもなっている。
経済が成長し賃金が上がる時代では消費の伸びに合わせて基準も上げられた。今は賃金は上がらず消費も縮んでいる。家族の形やライフスタイルも多様化した。社会経済情勢の変化に対応できていないのではないか。
審議会は現在可能な手法で検討を重ねたが、限界も表明した。見直し案を盛り込んだ報告書は、最低限度基準の必要性を指摘し年次計画を立てて手法を検討することを厚労省に強く求めた。
実は前回見直しの際の報告書も同じ指摘をしている。この間、厚労省に検討する姿勢は見えない。
確かに妙案はないようだ。ただ、例えば戦後間もなくは、食費や被服費など個々の費用を積み上げて必要額を決めていた。今回の審議会の議論でも、新手法の試案なども提供された。複数の手法を使って基準を決めることはできないものだろうか。
今は約百六十四万世帯が保護を利用し高齢世帯は53%を占める。今後も無年金・低年金で制度を利用する高齢者は増えるだろう。
安倍政権は、格差是正や貧困の連鎖を断つ政策を柱に掲げる。ならば「最低限度」を定める検討を正面から取り組むべきだ。