行政文書管理 事後に検証できるよう - 東京新聞(2017年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000162.html
https://megalodon.jp/2017-1220-0939-14/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000162.html

政府は行政文書の管理ガイドラインを改定する。確かに学校法人加計学園問題などでも役所の文書の扱いが注目された。だが本当に「改正」なのか。文書を国民の目から遠ざけるのなら許されない。
行政文書とは何か。これは法律上の定義がある。(1)職員が職務上、作成、取得した文書で、(2)組織的に用いるものとして、(3)行政機関が保有しているもの−だ。
政府が考える改正ガイドラインの最も大きく変わる点は「文書管理者」の役割だろう。これは役所の課長級が担い、文書の正確性を確保するため、複数の職員による確認を経た上で、同管理者が確認する。その上で「共用の保存場所に保存」と定める。
だが、正確性とは何か。作成の形式的な手順をいうのか、中身の内容まで指すのか。不明だ。さらに課長級が確認したもののみ、行政文書とされ、その他の文書は不存在扱いとされる恐れはないだろうか。不安に思う。
加計学園問題にあてはめてみると、「総理のご意向」などと書かれた文書が文部科学省から見つかった。内閣官房長官が「怪文書」と言った文書だ。文意が確かと言えないとしても、官僚が必要性を覚え、作成した文書であるには違いない。
前川喜平前文科事務次官も読んだのだから、冒頭に記した行政文書の定義を満たしていよう。改正ガイドラインだと、課長級が仮に内容の正確性に疑問を持つと「総理のご意向」は行政文書に該当しなくなろう。表に出ない。
だから正確性はなかなか定義が困難なはずである。政策決定に紆余曲折(うよきょくせつ)があった場合など、正確性の判定は余計に難しくなる。公文書管理法の目的は「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること」である。
つまり、紆余曲折のすべて、意思決定に至る過程を残すことであろう。幸い現代はデジタルの時代だ。「原則一年以上」の保存とする文書も無期限にパソコンに蓄積し、廃棄など無用である。
役所が今でも廃棄するのは、都合の悪い情報なのではと疑うほどだ。今回の改正でも、業務連絡や日程表などは一年未満で廃棄できる。政治家や外部との打ち合わせも重要なデータと考えて、ぜひ保存すべきだ。
歴史的な大事件では、一枚の文書が決定的な意味を持つことがある。検証の意義は大きい。公文書は民主主義の知的資源である原則を忘れないでほしい。