森友検査報告 聞きっ放しは許されぬ - 毎日新聞(2017年11月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017112402000167.html
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森友学園への国有地売却問題で、会計検査院が「十分な根拠が確認できない」などとする検査結果を国会に報告した。なぜ根拠不十分なまま行政手続きが進んだのか。今度は国会が追及する番だ。
検査院は参議院の要請を受け、三月から売却額の妥当性などを調べてきた。「根拠不十分」という検査結果は、これまで「法令に基づき適切に処理した」としてきた政府の説明と矛盾する。
税金の無駄遣いをチェックする独立機関から疑義が突きつけられたわけである。政府も国会も深刻に受け止めねばならぬ。
ごみ撤去費用として値引きされた約八億円をめぐり、検査院は、値引き額が最大約六億円過大だったと試算していたとされる。具体的な金額が報告書に盛り込まれなかったのは、ごみ処分単価に関する資料などが破棄され、正確な算定が困難だったためとみられる。
検査院は「妥当性の検証が行えぬ状況」と文書管理の問題点も指摘、改善を求めた。不明朗な文書管理の背景に何があったのか。
森友学園問題をめぐっては、大阪地検籠池泰典前理事長と妻を詐欺罪などで起訴するとともに、値引きに関与した近畿財務局長らについても背任容疑での刑事告発を受けて捜査している。
その捜査とは別に、国会も疑惑の解明に努めねばならぬことは言うまでもない。
問題の土地をめぐり、財務省などは「適正な売却だった」と繰り返してきたが、近畿財務局の担当者が学園側に買い取り価格を打診していた疑惑も発覚し、世の不信感は広がる一方である。
籠池夫妻と財務局側とのやりとりを記録したとされる音声データも明るみに出た。土地がダイオキシンに汚染されていた、などとして籠池夫妻が激しく抗議し、執拗(しつよう)に値引きを要求していた様子がうかがえる。言われるがままに値引き交渉が進んだのだろうか。
普通の民間人が役所と話をする場合、「根拠が不十分」なまま手続きが進むことはありえない。
安倍首相は先の衆院選に向けたテレビの党首討論で籠池前理事長を「詐欺を働く人物」「妻もだまされた」と突き放したが、それでもって、昭恵夫人付きの政府職員が財務省と学園側との間で連絡役をしていた事実が消えるわけではない。特別扱いが、行政手続きをゆがめたのではないか。
行政のチェックは、国会の役目だ。責任を持って「根拠不十分」の実態を解明してほしい。