米軍ヘリ事故など政治的な文言削除 沖縄県、芸術文化祭パンフから - 沖縄タイムズ(2017年11月20日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/172415
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執筆者「承諾ない」 県側「個人の見解」
「第46回沖縄県芸術文化祭」(主催・県、県文化振興会)のパンフレットに寄稿した屋良朝彦審査委員長(美術部門)の総評原稿から、衆議院の解散や東村高江の米軍ヘリ炎上事故などに触れた部分が県の意向で削除されていたことが18日、分かった。県側は「総評と直接関係のない個人の見解」などとして政治的な文言を削除。屋良委員長は「文言の削除に納得も承諾もしていない」と県の対応に反発している。(学芸部・与儀武秀)
県芸術文化祭は県民文化の向上を目的に開催。総評原稿は書道、写真、美術部門の各受賞作の画像や審査講評などが収録されたパンフレットに掲載され、各部門の総括的な作品内容や傾向などが書かれている。
屋良委員長が執筆した当初の原稿では、冒頭「静謐(せいひつ)に芸術に向き合えるかと思ったが予期せぬ衆院解散により巷(ちまた)は気忙しい雰囲気となってきた」「追い打ちをかけるように高江での米軍ヘリ炎上事故の発生、平和であることが芸術活動の大前提である。それさえも危うい沖縄の現状は容認できないし、やるせない」と書かれていた。
屋良委員長によると10月中旬に原稿提出後、県文化振興課から「文字数が多い」「総評と直接関係のない個人の見解」などとして、冒頭部分の削除を求められた。屋良委員長は「芸術活動は平和が根拠になることを強調したい」として応じなかったため、県担当課から「県の責任で削除する」と連絡があり、冒頭部分が割愛されたという。
県側は本紙の取材に「パンフレットに掲載された内容については県が責任を負うことになる。県の発刊物に個人の見解を載せることに対しての疑義が寄せられる可能性がある」などと説明した。
屋良委員長は18日の県芸術文化祭の表彰式の講評で、自身の総評の一部が削除されたと説明。本紙の取材に「記録として残る大事な資料が県の責任で文章を削除された。承諾も納得もしていないと県にも伝えている」と話している。

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「一方的編集 まずい行為」
翁長直樹さん(美術評論家、元県立博物館・美術館副館長)の話 県芸術文化祭の総評の執筆をお願いした当該分野の審査委員長の文章に、県が一方的に手を入れたとすればまずい行為であり、やってはいけないことだと思う。執筆者が納得でき、不満を持たないような対応ができなかったのかと感じる。
沖縄戦後美術は、沖縄のその時々の政治的、社会的な動きに翻弄(ほんろう)される状況で創られた作品が多い。政治的、社会的文脈と密着し、無視できない状況で美術活動が行われており、その文脈を抜きにして作品を語ることはできないのではないか。
先日は、うるま市のアートイベント「2017イチハナリアートプロジェクト+3」で作品が非公開になったことが報道で取り沙汰された。表現や発言の自由の判断は、一方的にならないような慎重さが求められると思う。