[首里城再建]検証作業が欠かせない - 沖縄タイムス(2019年11月3日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/493068
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首里城の正殿などが焼失した火災からきょうで3日となる。沖縄の歴史と文化の象徴を失った衝撃はあまりに大きいが、悲しみが深い分、それを乗り越え、再建を求める声が日に日に高まっている。
玉城デニー知事は火災翌日、首相官邸菅義偉官房長官を訪ね、早期再建に向けての支援を要請した。
県関係の国会議員10人も与野党の枠を超え、超党派で異例の要請を行った。
那覇市をはじめとする自治体も、ふるさと納税による支援金の受け付けを始めている。
動きは民間にも広がる。
日本トランスオーシャン航空(JTA)などはマイルによる寄付を呼び掛ける。本社など県内8メディアは県民募金を共同でスタートさせた。
県内外に設置された募金箱には、再建を願って支援を申し出る人が途切れないという。
政府が「財政措置を含めて、やれることは全てやる」と異例のスピードで支援を約束したのは、首里城を心のよりどころとする県民の思いをくんでのことだと思う。観光資源としての重要性も強く意識してのことだ。
一日も早く再建してほしいという県民の気持ちは痛いほどよく分かる。支援の動きも心強い。
しかし再建に向けた機運の高まりと同時に忘れてはならないのは、沖縄戦をくぐり抜けた貴重な美術品や苦労してよみがえらせた文化遺産を一夜にして焼失させてしまったという事実だ。

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県から首里城の運営を委託された「沖縄美ら島財団」の記者会見で、絵画や漆器など1500点以上の収蔵品のうち、少なくとも400点超が焼失したことが新たに判明した。その中には「雪中花鳥図」など尚家に関する資料が多く含まれている。
出火原因などの調査は県警と消防に任せるとしても、管理者としての県には、今回の火災をあらゆる面から検証し、県民に報告する義務がある。
そもそも首里城正殿などを管理する県と、運営を委託された指定管理者の美ら島財団との間で、どのような防火体制がとられていたのか。
初期消火のための放水銃が使えないという「想定外」はなぜ起こったのか。
詳細が分かっていない焼失美術工芸品の一覧と、その歴史的・文化的価値についても示さなければならない。
これを機に、県立博物館や那覇市歴史博物館など貴重な文化財を所蔵する施設の防火体制についても点検作業が必要だ。

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玉城知事は復帰50年にあたる2022年までに再建計画を策定する考えを示している。
だがまず取り組まなければならないのは検証委員会の設置である。首里城の復元作業に深くかかわった有識者らをメンバーに、「なぜ守れなかったのか」を冷静かつ徹底的に議論してもらいたい。
検証委員会の報告を再建への一歩とし、再建への歩みを、沖縄の歴史を学び、文化を見つめ直す機会とすべきだ。