嘉手納爆音控訴審 飛行差し止めで救済を - 琉球新報(2017年11月9日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-610513.html
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被害放置の実態を救済することこそ司法の役割である。
第3次嘉手納爆音訴訟控訴審の第1回口頭弁論が7日、福岡高裁那覇支部で開かれた。米軍嘉手納基地の周辺住民2万2048人が国を相手に夜間・早朝の米軍機飛行差し止めなどを求めている。
国側の主張は耳を疑う。「最近の(嘉手納基地周辺の)騒音は軽減している」と言うのだ。
口頭弁論の日、嘉手納に暫定配備された最新鋭ステルス戦闘機F35Aが訓練を開始した。嘉手納町の測定で、道の駅かでなで107・7デシベルを記録した。ちょうど自動車の2メートル前でクラクションを聞いた音に相当する。嘉手納高校は騒音で授業を中断した。米軍岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機も飛来し、常駐のF15などと共に激しい騒音をまき散らした。
外来機のF16戦闘機が訓練を始めた5月8日前後の51日間を嘉手納町が比較した結果、町全体の騒音発生回数は50・7%増の6698回、苦情件数は1・8倍の94件に上っている。
4月から7月までの4カ月間で、航空機騒音規制措置(騒音防止協定)で飛行が制限されている午後10時から午前6時までの夜間・早朝の離着陸は647回あった。
嘉手納基地周辺は、憲法で保障されている基本的人権生存権が侵害されている。1982年の第1次訴訟提起から35年。いまだに騒音被害は改善されず不条理が繰り返されている。
一審判決は「違法な爆音被害が漫然と放置されている」と爆音の違法性を認定しながら、「第三者行為論」を持ち出して、国には米軍機の運航を規制し制限できる権限がないとして飛行差し止め請求を退けた。
国に権限がないと司法は判断したが、実際には日米合同委員会で合意した騒音防止協定がある。実効性がないと指摘されるため、規制を強化し実効性ある内容に見直すよう促すことはできるだろう。「第三者行為論」を持ち出すことは、司法の責任放棄につながる。ぜひ控訴審で踏み込んでもらいたい。
口頭弁論で国は「賠償額は高額で不当」と主張した。高額になったのは被害の大きさを反映させたからだろう。
一審判決は、健康被害について高血圧症発生のリスクなど一部を認定した。騒音への感受性の高い子どもにより大きな影響を及ぼしている可能性や、戦争を経験した住民らに戦争時の記憶、不安をよみがえらせることも認めた。
午後7時から午前7時まで静かにしてほしいという原告の主張は、決して「ぜいたくな願い」ではない。
もはや夜間・早朝の飛行を差し止めなければ、根本的な解決にならないことは明らかだ。爆音の違法性がこれ以上放置できない段階に来ていることを、控訴審を通じて明らかにしてほしい。