<金口木舌>未来のキーマン - 琉球新報(2017年11月9日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-610519.html
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乱世に挑む若者の物語には、老賢者が登場することが多い。主人公の迷いを解き、進むべき道へと導く存在である。映画の主人公ハリーポッターが学んだ魔法使い学校の校長ダンブルドアは110歳。スターウォーズの老戦士ヨーダは800歳

▼高齢者が社会を導く。そんな発想を込めた言葉に「シルバー・デモクラシー」がある。評論家の寺島実郎氏はそれを題にした本で、学生運動や冷戦崩壊など激動の時代を体験した戦後世代こそ、民主主義に貢献できると論じた
▼日本の高齢者人口の割合は2060年には4割に達する。有権者人口でみると、65歳以上は5割で、若者の低投票率が続けば、有効投票の6割を占める
▼寺島氏は「老人の老人による老人のための政治」の陰の側面も挙げる。「民主主義への失望」と呼ばれる現象に高齢者の意思が反映している。米大統領選でのトランプ氏支持は高齢者ほど多かった
▼高齢者が鍵を握る。そんな時代だからこそ、愚劣さや浅はかさを見抜く力や豊かな経験を持つ高齢者は、大きな視野で進むべき道を示す羅針盤になれると寺島氏は自覚を促す。全共闘運動など国権主義を拒んだ経験も糧の一つと
▼「ぴんぴんころり」「生きがい、出会い、居場所づくり」。高齢者へのそんな従来の理想から、もう一歩踏みだそう。「亀の甲より年の功」。未来のキーマンとして。