トランプ大統領来日 戦争を防ぐ手だて示せ - 沖縄タイムズ(2017年11月6日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/166153
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トランプ米大統領が来日した。北朝鮮の核・ミサイル開発を巡って戦争への懸念が高まっている中での、就任後初めてのアジア歴訪の旅である。
きょう安倍晋三首相と会談するのを皮切りに、韓国、中国を訪問し、文在寅大統領、習近平国家主席と相次いで会談する。核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応が最大の課題だ。
私たちの懸念は一つ。圧力一辺倒の政策で果たして戦争を防ぐことができるのか、という点である。
戦争が起きたら甚大な被害が出ると分かっていながら、誰も「戦争は起きない」と断言することのできない怖さ。多くの国民が感じているのは、そのような宙づり状態の不安感だ。
安倍首相は、軍事力の行使を含む「全ての選択肢がテーブルの上にある」というトランプ大統領への支持を一貫して表明してきた。「今は対話の時ではない」と圧力の重要性を強調する。
日米首脳会談では、どのように圧力の最大化を図るか、が話し合われるという。
安倍首相とトランプ大統領の蜜月関係は過去のどの日米首脳と比べても際立っており、「日米同盟にはわずかな隙もない」と外務省幹部は指摘する。
隙がないということは、軍事力行使の事態が発生したとき、選択の余地がなく自動的に米軍と行動を共にすることを意味する。政府は米国の軍事力行使を思いとどまらせる役割こそ果たすべきである。

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北朝鮮経済制裁で締め上げ圧力を最大化し、窮地に追い込んだ果てに、何が起きるのか。
対話路線を堅持するティラーソン国務長官に対し、トランプ大統領は10月初め、北朝鮮との対話は「時間の無駄」だとツイッターで指摘した。
政権内部の食い違いが表面化したのである。
今回のアジア歴訪でトランプ大統領はどのような北朝鮮政策を打ち出すのだろうか。
北朝鮮の核・ミサイル開発は日本や韓国にとって深刻な脅威である。北朝鮮の核保有が動かしがたい現実になりつつあるのは確かだが、そうだからといって、北朝鮮非核化の目標を取り下げるようなことがあってはならない。
韓国の核保有化と日本の非核三原則見直しの動きを誘発し、核不拡散体制(NPT体制)が危機的な状況に陥るからだ。非核化に応じようとしない北朝鮮を対話の場に引き込むためには何が必要か。

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日米韓中ロの協調体制を維持し、北朝鮮に非核化を求めていくと同時に、北朝鮮の安全保障を考える時期にきているのではないか。
北東アジアにどのようにして安定した地域秩序をつくり出していくか。その視点からのアプローチが欠かせない。
核廃絶を主張しつつ米国の「核の傘」に頼る日本が、北朝鮮の非核化を理由に米国の軍事力行使を容認し、自らも集団的自衛権の行使に踏み切るようなことがあれば、日本の核軍縮運動は信用を失い、瓦解(がかい)しかねない。