米朝会談中止 対話の努力を続けよ - 東京新聞(2018年5月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052602000172.html
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驚きと失望が広がっている。トランプ米大統領が、北朝鮮との首脳会談の中止を発表したためだ。それでも両国の長い対立関係を解消するには首脳会談しかない。対話の機運を維持すべきだ。
米国側は、中止の理由を「一連の約束違反」と説明した。
北朝鮮側の行動には問題があった。いったん認めた米韓合同軍事演習に反発、米政権幹部を批判する高官談話も発表した。事前協議にも応じなかったという。
この間、金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長は二回目の訪中を行い、貿易問題を巡り、米国と対立する中国の支援を取り付けていた。刺激の度が過ぎたようだ。
しかし、そもそもこの会談は、韓国の仲介を受けてトランプ氏が即断で応じたものだ。
会談実現に向け北朝鮮側は、米国人三人の解放に応じた。北東部にある核実験場を爆破し、非核化に応じるような姿勢を見せた。
二十二日にトランプ氏は、訪米した韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と、米朝会談を前提にした調整を行ったばかりだった。
まだ首脳会談まで二週間以上ある段階で、突如中止を宣言し、必要なら軍事的対応を辞さない姿勢まで示すのは、大国の指導者としてふさわしい行動だろうか。トランプ氏一流の駆け引きだとしてもだ。
中止は残念だが、決裂ではない。希望はもちろん残っている。
たとえば金桂冠(キムゲグァン)・第一外務次官が発表した談話の中で、首脳会談の必要性を訴え、米国に対して再考を求めたことだ。北朝鮮にしては実にソフトな対応だった。
また、以前、トランプ氏の発言に直接強く反発した金委員長は、今回批判を控えている。
北朝鮮との関係改善を進める韓国も、康京和(カンギョンファ)外相が米国の対話継続に向けた意思を確認するなど動いており、期待したい。
はっきりしてきたのは、米朝両国の食い違いだ。
非核化を実現するまでの時間、方法について「一括、もしくは短期間」を求める米国と、「段階的」を主張する北朝鮮の間で、鋭く対立が残っている。
これについてもトランプ氏自身が最近、段階的な非核化を容認するような発言をしており、調整は可能だ。もちろん北朝鮮も歩み寄らねばならないだろう。
何よりも重要なことは、完全な非核化の実現であり、緊張を高めないことだ。冷静な対話を、一日も早く再開してほしい。