高校不登校・退学最多 貧困の連鎖絶ち希望を - 琉球新報(2017年10月28日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-603472.html
http://archive.is/2017.10.31-005527/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-603472.html

貧困と不登校、高校退学が関連していることを示す調査結果が発表された。貧困の連鎖を断ち、希望が持てる施策が必要だ。
文部科学省の2016年度問題行動・不登校調査によると、私立を含む県内の高校生の不登校者数は1510人。千人当たり32・3人で全国平均の2・2倍、全国最多だった。中途退学者は1098人で退学率は全国平均の1・5倍、全国最多だった。
県立高校での不登校の要因は「『無気力』の傾向」が最も多く29・3%だった。表面上「無気力」としているが、中身を精査する必要がある。
県が3月に発表した高校生の実態調査の中間報告によると、困窮の中で育った生徒は学費や昼食費、交通費を稼ぐため、アルバイトに追われている。過半数は週4回働いている。「無気力」に見えるのは、アルバイトで疲れ、学業がおろそかになっているのかもしれない。
中退の理由の内訳に「経済的理由」6・8%、「家庭の事情」4・7%がある。背景に貧困があると考えられる。アルバイトでも金が工面できず学業を諦め、自らの進路を絶たれる生徒がいる。
中退すると、正規雇用の職を得るのが難しくなり、貧困から抜け出せないという悪循環に陥る可能性がある。
高校の授業料の無償化制度はあるが、申請手続きが複雑で生活に追われて申請できない家庭もある。手続きの簡略化など工夫が必要だ。
政府は教育を受けるチャンスを確保する責務がある。県の貧困対策推進計画は、高校生期を対象に就学継続の支援や中途退学の防止、キャリア教育などの充実に取り組むとしている。具体的な施策としては給付型奨学金制度の創設や低所得者世帯に対する学習支援の充実を盛り込んだ。支援の速度を速めてほしい。
一方、国公私立の県内小中高、特支校のいじめ認知件数は1万2482件。前年度(2335件)の5・3倍、約1万件増えた。全国的にも約10万人増えた。
増加したのは文科省が今回の調査から、これまで対象になかった「けんかやふざけ合い」なども認知するよう求めたからだ。深刻ないじめの芽を事前に摘もうとしているが、自殺防止にまでは至っていない。
沖縄県の場合、認知されたいじめのうち92・8%は「解消」、6・9%が「取り組み中」で、解消率は前年度の81・6%から10ポイント以上改善している。認知件数は大幅に増えたが重大ないじめ事案は県内でも発生しいる。さらにLINEなど携帯を利用したいじめの把握は難しい。
認知件数大幅増は教員の負担増を意味する。一つ一つの案件に丁寧に対処するために、教員の増員は欠かせない。長野県はLINEを使って全中高生を対象にした相談窓口を設置した。先行事例も参考にしたい。