核廃絶決議、問われる整合性 核禁条約に賛同しない日本 - 朝日新聞(2017年10月29日)

http://www.asahi.com/articles/ASKBX52GGKBXUHBI01C.html
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27日の国連総会第1委員会。日本の決議案には多くの批判が出た。
「2017年は核軍縮の転換点。核禁条約ができたことは、無視できない画期的な出来事のはずだ。今年は賛成できない」
昨年は賛成したコスタリカの代表はこう述べ、棄権に回った。今年の決議案が、7月に国連で採択された核禁条約に触れていない点を問題視した。コスタリカは条約をまとめる交渉で議長国を務めた。
同じく昨年は賛成したニュージーランド。デル・ヒギー軍縮大使は「今年の決議案には過去の決議からの根源的な逸脱があり落胆している」と述べ、やはり棄権を宣言した。
今年の決議案が、「核兵器の使用による壊滅的な人道的結末についての深い懸念」とした点などを指している。昨年は「核兵器のあらゆる使用による壊滅的な人道的結末についての深い懸念」と、「あらゆる」という言葉が入っていた。
「あらゆる」という言葉がないと、核使用を完全に禁じることにはならず、核使用を容認するような解釈を生む――というのが専門家の共通見解とされる。
フランスの元外交官でシンクタンクジュネーブ安全保障政策研究所」のマルク・フィノー氏は「自衛のためなどの場合、合法的に核兵器を使用できうるという意味になる」と解説する。別の国際法専門家は「核攻撃に対して、核による『報復攻撃』の可能性を残しておくというのが日本の立ち位置ではないか」と指摘した。
また今年の決議案で批判が集まった中に、昨年の「核兵器の完全な廃絶を達成」という「明確な約束」を再確認する文言が、「達成」部分が削除され「核不拡散条約(NPT)の完全履行」に後退した点がある。NPTは核の使用を禁じていない。日本政府関係者によると、安保環境が厳しくなる中、核保有国の支持を得るため交渉を重ねた結果、この表現でしか折り合えなかったという。
唯一の戦争被爆国の日本は1994年以来、毎年、国連総会に核廃絶決議案を提出し、核軍縮を世界に呼びかけてきた。決議には加盟国に対する「勧告」程度の強さしかないが、それゆえ、核を巡る立場の違いを超えて、多くの国々の賛同を得ることができる。昨年は167カ国から賛成を取り付け、日本政府が世界の核軍縮分野の「橋渡し役」としての存在感を発揮することを可能にした。
今年の決議案に賛成した国からも、批判の声は上がっている。スイスとスウェーデンの代表は「再解釈や書き直しのいかなる試みにも断固として反対する」。同じく賛成したある国の関係者は取材に対し、「来年も同じ決議案なら、投票行動の変更を検討する」と述べた。(ニューヨーク=金成隆一、ジュネーブ=松尾一郎)