核廃絶決議案 賛成23カ国減 禁止条約対応で日本に反発 - 毎日新聞(2017年10月28日)

https://mainichi.jp/articles/20171028/k00/00e/010/259000c
http://archive.is/2017.10.29-011732/https://mainichi.jp/articles/20171028/k00/00e/010/259000c


【ニューヨーク國枝すみれ】国連総会第1委員会(軍縮)は27日、日本政府が提案した核廃絶決議案を144カ国の賛成を得て採択した。昨年の賛成票167から支持を23カ国減らした。今年7月に採択された核兵器禁止条約をめぐって、条約を支持する非核保有国と、反対する核兵器保有国や核の傘に頼る同盟国との対立が強まったのが原因。棄権は27カ国で、うち禁止条約採択を主導したオーストリアなど14カ国が、昨年の賛成から棄権に転じた。
禁止条約を主導した国々との対立を受け、採決に加わった国の数自体も13カ国減った。賛成国には米国のほか、昨年棄権した英仏も加わった。反対国は昨年と同じ、中国▽ロシア▽北朝鮮▽シリアの4カ国。韓国やイラン、インドなどは昨年に続いて棄権した。
高見沢将林・軍縮大使は賛成144票の結果について「幅広い賛成を得られた」と評価。棄権票が増えたことに関しては「謙虚に受け止め、核軍縮に向け具体的措置をつめていくことが課題」と語った。
日本の決議案は「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動決議案」。各国が連帯して核なき世界を目指すことを訴える内容で、1994年から毎年提案してきた。
日本政府は、核兵器禁止条約への言及を求める非核保有国の強い要望を受け、「核兵器なき世界の実現に向けたさまざまなアプローチに留意する」との表現を新たに盛り込む一方、核兵器禁止条約については明記しなかった。また、北朝鮮による核実験や大陸間弾道ミサイルICBM)発射に言及することで「安全保障上の懸念に向き合わずに核軍縮だけを進めるのは非現実的」と主張する核保有国や同盟国に配慮した。
さらに今年の決議は「核兵器のあらゆる使用」が壊滅的な人道上の結末をもたらすと明記していた昨年の文言から「あらゆる」が削除された。核実験全面禁止条約(CTBT)発効の障害となっている米国など8カ国の未批准国に批准を要請する文言も表現が弱められ、核保有国に核軍縮の責務を課す核拡散防止条約(NPT)第6条への言及も削除された。
ニュージーランドなど賛成から棄権に回った国々は「昨年より内容が後退した」と日本の決議案を批判した。
一方、核兵器禁止条約の採択を主導したオーストリアが提出し、全ての国にできるだけ早期に禁止条約を批准するよう呼びかける決議案も27日、非核保有国118カ国の賛成で採択された。核保有国や米国の核の傘に頼る日本など39カ国が反対、11カ国が棄権した。
決議案は今年7月の核兵器禁止条約の採択を歓迎し、条約は核軍縮への不可欠な貢献と再確認している。

河野外相が意義強調
河野太郎外相は28日、日本政府が提出した核兵器廃絶決議案が国連総会第1委員会で採択されたことを受けて「核兵器国や核兵器禁止条約に賛成した国を含む、幅広い国々の支持によって採択されたことを心強く思う」との談話を発表した。
決議案への賛成が昨年より減少したことを踏まえ「核兵器国と非核兵器国のみならず、非核兵器国の間でも安全保障環境に応じて立場の違いが顕在化している」と指摘。そのうえで「すべての国が核軍縮の取り組みに改めて関与できる共通の基盤の提供を追求した」と意義を強調した。
決議案で日本が交渉に参加しなかった核兵器禁止条約に触れなかったことへの言及はなかった。【加藤明子

■日本が提案した核兵器廃絶決議案への投票行動