「森友・加計」避けたい官邸 参院自民が押し切る 会期延長 国会、来月22日まで - 東京新聞(2018年6月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018062102000141.html
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国会は二十日の衆院本会議で、会期を同日から七月二十二日まで三十二日間延長することを与党などの賛成多数で議決した。通常国会の会期が延びるのは、安全保障関連法を審議、成立させた二〇一五年以来、三年ぶり。「働き方」関連法案やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案、参院の定数六増を伴う公職選挙法改正案について、与党は安保法のように野党の反発を押し切って成立させる構えだ。 (我那覇圭)
「政府・与党の都合ばかり優先する身勝手な国会運営は絶対に認められない。予定通り閉会し、粗悪な法案は廃案にすべきだ」。立憲民主党の道下大樹氏は衆院本会議で会期延長の反対討論に立ち、政権を非難した。
野党がやり玉に挙げる「働き方」関連法案は、年収一千七十五万円以上の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」導入が柱。「長時間労働で過労死を助長する」という批判は根強い。安倍晋三首相は二十日午前に行われた公明党山口那津男代表との与党党首会談で「『働き方改革国会』とうたってきたので、法案成立を図りたい」と強調した。
自民党などが提出した公選法改正案に対する野党の反発も強い。「一票の格差」是正と無関係な比例代表の定数も増やし、政党があらかじめ定めた順に従って当選者を決める「拘束名簿式」を一部導入する内容だが、選挙区の「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区で漏れた候補者を名簿に載せ、救済したい自民党の狙いが透けてみえる。衆院本会議では「究極の党利党略、選挙制度の私物化」(国民民主党斉木武志氏)という声が上がった。
今国会は森友、加計学園問題などを巡る政権不祥事を野党が追及する場面が目立つ。そのため、法案審議は停滞。政府・与党は確実な成立を図るため、一カ月超の会期延長に踏み切った。立憲民主党辻元清美国対委員長加計学園の加計孝太郎理事長らの証人喚問などが実現するまで「日程協議に応じられない」と記者団に語った。
◆「小幅」→32日間 法案優先で「大幅」
今国会の会期延長幅を巡っては、首相官邸参院自民党が対立し、水面下で綱引きが繰り広げられた。森友、加計(かけ)問題での追及を回避するため、官邸は小幅延長を主張したのに対して参院自民党は残る重要法案を成立させるために一カ月を超える大幅延長を求めた。最終的には官邸が譲歩して決着した。
会期末まであと二日に迫った十八日夜、自民党の重鎮は延長幅について「官邸と参院の調整がまだついていない。会期末当日まで決まらないかもしれない」と難航していることを明らかにした。
官邸が描いていたのは、安倍晋三首相が欧州などの歴訪に出発する予定を考慮して、七月十日ごろまでに国会を閉じる案だった。首相が三選を目指す九月の党総裁選への影響を考慮して、森友、加計問題で首相が国会で追及される状況を早く終わらせたいとの本音が見え隠れする。
参院自民党が大幅延長を主張したのは、参院で審議が残る重要法案に加え、参院議員の定数を六増させる公職選挙法改正案を確実に成立させるには、十分な審議時間を確保する必要があるからだ。最終的には官邸が譲歩した。参院自民党は結束が強いことで知られ、官邸が総裁選への影響も考慮したとみられる。 (中根政人)