(余録)昨年の英国民投票の… - 毎日新聞(2017年6月20日)

https://mainichi.jp/articles/20170620/ddm/001/070/123000c
http://archive.is/2017.06.20-005302/https://mainichi.jp/articles/20170620/ddm/001/070/123000c

昨年の英国民投票欧州連合離脱やトランプ米大統領の当選を予想しそこなったことで世論調査の信頼性が取りざたされた。過去を振り返れば、世論調査米大統領選の予測失敗で進歩してきたという。
1936年の選挙では200万人の回答を得た調査が予測を外し、対象者3000人のギャラップの調査が的中する。だが48年の選挙では性別や年齢、収入ごとに人口比で調査人数を割り当てたそのギャラップの調査が予測を外した。
以後、人為的な割り当てをせず、運を天に任せてくじで選んだ人を調査した方が正確な結果が出るという無作為(むさくい)抽(ちゅう)出(しゅつ)法(ほう)が定着した。まさに天の配剤だが、近年はその天の手際が人々の意識や情報環境の変化で変調をきたしているのか。
そこで自分に不利な世論調査は偽ニュースと断じ、有利なものは称賛するトランプ氏のような政治指導者も現れる。一方、こちらは世論調査での安定した支持率を「1強支配」の政治資源として最大限利用してきた日本の政権である。
その安倍(あべ)内閣の支持率が小紙の世論調査で前回比10ポイントも急落、不支持率との逆転をみせた。他社の調査でも2ケタの落ち込みをみせたところをみると、やはり加計(かけ)学園問題といわゆる「共謀罪」新設の強引な運び方がたたったらしい。
先年の安保法制での支持率低落はほどなく回復してみせた首相だった。ここは「偽ニュース」と開き直る手はなく、ほとぼりの冷めるのを待つらしい。かねてご執心の「印象操作」のお手本を見せてもらえるのか。