過疎地の自治 向上目指し広く議論を - 朝日新聞(2017年6月13日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12984260.html
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高知県大川村が村議会(定数6)を廃止し、「町村総会」を設ける検討を始めた。人口約400人で、離島を除いて全国最少だ。村議のなり手不足が懸念され、村長がきのう、議会の存続を前提としつつ、具体的な研究を進める考えを表明した。
地方自治法は、町村に限り、議会を置かずに有権者が議案を直接審議する総会を設けることを認めている。政府は1947年の法制定時、「小さな町村の自主性を尊重した」と説明している。大川村が選択肢として検討することは十分理解できる。
15年の統一地方選では2割超の町村議選が無投票になった。なり手不足は過疎地の町村に共通する課題だ。全国で町村総会の検討が広がる可能性はある。
ただ、「窮余の一策」というだけなら、議会を総会に代えても地域の衰退は止まるまい。「どうすれば自治を向上できるか」という視点から、住民も交え、あり方を幅広く議論していくことが望ましい。
実際問題として、町村総会の実現へのハードルは高い。
総会は有権者が一堂に会することが前提だ。地方自治法は総会について「議会に関する規定を準用する」と定めており、そのままなら有権者の半数以上の出席が総会成立の条件となる。
大川村は、険しい山あいに集落が点在する。高齢化率は4割を超え、交通手段も乏しい。それだけの人が集まれるか、村内では疑問視する声が強い。
議会が扱う案件は予算や条例など幅広い。総会で有権者が十分な知識をもとに判断できるのかという課題も出てこよう。
町村総会は戦前戦後を通じて有権者が数十人しかいない2村に設置されただけ。参考になるような記録もほとんどない。
高市早苗総務相は「(自治体から)相談があれば適切に助言する」と述べた。国としても、町村総会の実現に道を開く制度設計を進めてもらいたい。
議会のあり方を見直し、担い手を増やす道がないかも、もっと探っていくべきだろう。
町村議の平均報酬は月21万円で、「兼業なしでは暮らせない」との声は強い。議会は平日昼の開催が一般的だが、会社員だと両立が難しい。
15年の統一選で欠員が出た北海道浦幌(うらほろ)町議会は今年3月、検証報告書をまとめた。「若者手当」「育児手当」の支給や、議員になることに伴う休職、休暇制度の整備を提言している。
自治を向上させるためにも、より多彩な人材が地方政治にかかわることが望ましい。国も地方も有効策を考えるときだ。