職員の記憶を特定秘密 4割弱は文書なし 情報入手見込みも指定 - 東京新聞(2017年3月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017033002000143.html
http://megalodon.jp/2017-0331-0912-56/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017033002000143.html


特定秘密の運用状況を点検する衆院の情報監視審査会は二十九日、二〇一六年の年次報告書を大島理森(ただもり)議長に提出した。報告書によると、一五年十二月末時点で四百四十三件ある特定秘密のうち、四割弱の百六十六件で行政文書がなかった。うち十五件は、情報入手前からあらかじめ特定秘密に指定。十件は文書ではなく、職員の記憶や知識を特定秘密に指定していた。 (我那覇圭)
「あらかじめ指定」は武器や人的情報源に関する情報などで、入手見込みの段階で指定された。職員の記憶や知識の指定は、公安調査庁一件と防衛省九件。
国家公務員法は公務員に守秘義務を課し、職務上知り得た秘密を漏らすと最高一年の懲役となるが、特定秘密保護法は最長十年の懲役を科す。記憶や知識も特定秘密に指定することで、より厳しく情報漏えいを防ぐ狙いがあるとみられる。
その他は、文書が他機関にある例が十三件、暗号のように文書ではなく電子機器などで記録されている例が九十一件などだった。
報告書は「あらかじめ指定」について「拡大しすぎている」と指摘。例外的な取り扱いであることや、厳格な要件を明記した規定を定めるよう求めた。記憶や知識の指定については「情報の特定および立証を困難にする。情報の保護および漏えいを防止する上でも重大な疑問がある」と、不適切な秘密指定になりかねないと疑問を示した。
内閣官房の担当者は審査会に対し、「あらかじめ指定」について「将来、情報を入手することが確実な場合」は可能だと説明。職員の記憶や知識の指定に関しては「特定秘密の指定の対象は個々の文書ではなく『情報』。行政文書が存在していない特定秘密も否定されない」と説明した。
ただ「あらかじめ指定」のうち、警察庁、外務省、防衛省が指定した五件は情報が入手できず、昨年中に指定を解除。職員の記憶や知識を指定した十件は審査会の指摘後に文書を作成するか、指定が解除された。これらにより、文書のない指定は計三十六件減った。
情報公開に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「『あらかじめ指定』は全く不要と言い切れないが、特定秘密の『枠』を作って情報が入らなくても、そのままになっていると分かった。職員の記憶の指定も、文書がなければ、指定が適切かどうか検証が難しい」と指摘。「審査会が行政の文書管理の点検を試みた点は評価できる。今後、独立公文書管理監などとの連携が課題だ」と述べた。

<情報監視審査会> 特定秘密の指定や解除に問題がないかをチェックする衆参両院の常設機関。各8人の議員で構成する。審査は非公開の秘密会形式で実施。政府から秘密保護法の運用状況について報告を受け、毎年1回、審査結果に関する報告書をそれぞれの議長に提出する。必要に応じて特定秘密の提示を要求できるが、政府は安全保障上の理由などで拒否できるため、監視機能を十分に果たすことができないとの批判がある。