http://www.sankei.com/politics/news/170324/plt1703240079-n1.html
学校法人「森友学園」をめぐる疑惑で国会が大揺れの中、安倍晋三首相は狐につままれたような気持ちなのではないか。それでも昭恵夫人の「口利き」疑惑も、「100万円寄付」疑惑も、「ない」と証明するのは「悪魔の証明」と言われるほど難しい。このまま野党のペースにはまり、ズルズルと「森友国会」を続ければ政権のダメージははかり知れない。首相に起死回生の一手はあるのか−。(田北真樹子)
首相は24日の参院予算委員会で、私信である籠池泰典氏の妻と昭恵夫人のメール内容まで公開に応じた。水掛け論を防ぎたいとの思いからだった。23日の証人喚問での籠池氏の証言について首相はこう言い放った。
「悪意に満ちたものであるということは申し上げておきたい」
これで疑惑が晴れるかと思ったが、野党の追及はやまない。福島瑞穂氏(社民)に至っては「(寄付してないなら)メールが『祈ります』から始まるわけないじゃないですか」と独自解釈を披露し、首相を責め立てた。どんな抗弁も受け付けないならば、国会は「魔女狩り」に等しい。
首相は「問題の本質」という言葉を繰り返し、森友学園の国有地払い下げをめぐる疑惑が、違法でもない「100万円寄付」問題に焦点がずれたことに疑義を唱えたが、野党側は聞き入れる様子はない。
そもそも2月中旬に森友学園の疑惑が浮上した際、首相はさほど気にとめていなかった。籠池氏夫妻と面識はなく、疑惑の中身さえ知らない。「昭恵夫人が何度か講演に行った幼稚園」という程度の認識だった。
首相も首相側近も「それほど打撃はない」と余裕綽々(しゃくしゃく)だった。それが2月17日の衆院予算委での「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」という強気発言につながった。
ところが、籠池氏夫妻の特異なキャラクターもあり、ニュースは森友学園一色になる。さらに3月16日には籠池氏から「小学校建設費に首相の寄付金が入っている」という爆弾発言が飛び出した。
「ええっ!」。寝耳に水の一報に首相は執務室で驚きの声を上げた。すぐに昭恵夫人や同行した夫人付の政府職員らに確認したが、そんな事実はないという。「籠池氏の発言にこれ以上翻弄されるわけにはいかない」と考えた首相サイドは、籠池氏の証人喚問にもゴーサインを出した。
だが、これは逆効果だった。証人喚問は「籠池劇場」の様相を呈し、逆風はますます強まった。
「ない」ことを証明するのはこの上なく難しい。
このままでは内閣・自民党の高支持率を背景に7月の東京都議選を乗り切り、来年9月の総裁選で3選を果たすというシナリオも崩れかねない。都議選に自民党が大敗すれば党内のムードは一変し、「安倍降ろし」がじわりと広がる可能性もある。
首相が取り得る対抗策は何があるのか。「最強のカード」である衆院解散もその選択肢の一つとなる。