「森友学園」に強制捜査 問題の核心を見落とすな - 毎日新聞(2017年6月22日)

https://mainichi.jp/articles/20170622/ddm/005/070/165000c
http://archive.is/2017.06.22-001459/https://mainichi.jp/articles/20170622/ddm/005/070/165000c

森友学園問題とは何だったのか。その核心を見落としてはなるまい。
大阪市の学校法人「森友学園」が、詐欺と補助金適正化法違反の容疑で、大阪地検特捜部の強制捜査を受けた。
籠池泰典前理事長は、小学校建設に関して虚偽の契約書を国土交通省に提出し、補助金約5600万円を不正受給したほか、幼稚園の専任教員数を偽るなどして大阪府から補助金を詐取した疑いが持たれている。
しかし、捜査がそこでとどまっては、疑惑の解明には至るまい。
学園は小学校開設に関して、国と大阪府からそれぞれ異例の厚遇を受けている。なぜそれがまかり通ったのか。そこに問題の核心がある。
府の私学審議会は慎重な意見があったにもかかわらず、「認可適当」と答申した。
財務省近畿財務局は、売却を原則とする国有地について当初は学園の要求通り借地契約を結んだ。そして、地中からごみが見つかると、鑑定価格から約8億円も安い1億3400万円で売却した。
財務局は、地中から見つかったごみの処理費用を8億円と見積もったという説明だが、交渉記録を破棄したとして学園との詳しいやり取りは明らかにしていない。
籠池氏は強制捜査について「国策捜査だ」と述べた。自らが政治的な犠牲者だと言わんばかりの勝手な発言だ。
しかし、籠池氏は複数の政治家の名前を挙げて国や府へ学校開設への支援を求めてきた。安倍晋三首相の妻昭恵氏が一時期、名誉校長に就き、官僚が政権の意向をそんたくしたとの指摘もある。政治的な要素が背景にあることは否定できない。
特捜部は、財務局が不当に国有地を安く売却し、国に損害を与えたとする背任容疑の告発状を受理している。立件へのハードルは高いと見られるが、疑惑の核心に迫るべく捜査を尽くすべきだ。
国会では、野党が求める昭恵氏や財務省幹部らの証人喚問を与党側が拒み続けた。「昭恵氏から100万円の寄付を受けた」という籠池氏の証言も真偽不明のままだ。
刑事責任の追及とは別に、国会も引き続き、問題の真相究明に努める必要がある。