http://mainichi.jp/articles/20170109/k00/00m/040/097000c
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東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染土を再利用する環境省の方針に対し、管理方法の説明が不十分などとして原子力規制庁が疑義を呈していることが分かった。再利用に伴う被ばく線量については本来、規制庁が所管する放射線審議会に諮られるが、同審議会への諮問も認めていない。規制庁は環境省の外局で、再利用は「身内」から疑問視されている。【日野行介】
環境省は昨年1〜5月、放射線の専門家らを集めた非公開会合で汚染土の再利用について協議した。原発解体で出る金属などの再利用基準は放射性セシウム濃度が1キロ当たり100ベクレル以下(クリアランスレベル)の一方、8000ベクレルを超えると特別な処理が必要な「指定廃棄物」になることなどを考慮し、汚染土の再利用基準を検討。6月、8000ベクレルを上限に、道路の盛り土などに使いコンクリートで覆うなどの管理をしながら再利用する方針を決めた。
関係者によると、その過程で環境省は8000ベクレルの上限値などについて、放射線審議会への諮問を規制庁に打診。規制庁の担当者は、管理の終了時期や不法投棄の防止策など、具体的な管理方法の説明を求めた。その際、「管理せずに再利用するならクリアランスレベルを守るしかない」との原則を示した上で、「普通にそこら辺の家の庭に使われたりしないのか」との懸念も示したという。これに対し環境省が十分な説明をできなかったため、規制庁は審議会への諮問を認めなかった。
放射線審議会は法令に基づき設置され、放射線障害を防ぐ基準を定める際に同審議会への諮問が義務づけられている。指定廃棄物の基準を8000ベクレル超と認めたのも同審議会だった。
再利用を進める環境省除染・中間貯蔵企画調整チームの当時の担当者は「規制庁に相談したが、諮問までいかなかった」と取材に回答。原子力規制庁放射線対策・保障措置課は「どういう形で何に使うのか、管理はどうするのかという具体的な説明をしてもらえなければ、情報不足で安全かどうか判断できないと環境省には伝えた」と話している。解説 8000ベクレル上限は矛盾
汚染土の再利用を巡り、原子力規制庁が所管の放射線審議会への諮問を認めないのは、8000ベクレルを上限とする矛盾を認識しているからに他ならない。
そもそも8000ベクレルは、これを超えれば特別な処理が必要になる「指定廃棄物」の基準だ。環境省は今回、この8000ベクレルを上限に、管理しながら汚染土を再利用する方針を決めたが、これはすなわち「特別なゴミ」が、ある一線から突然「再生資源」に変わることを意味する。規制庁が環境省に「管理せずに再利用するならクリアランスレベル(100ベクレル以下)しかない」と原則論を強調したのも、こうしたことを疑問視しているからだとみられる。
にもかかわらず、法令で義務づけられた審議会への諮問を経ずに汚染土の再利用基準を決めたのは異例だ。環境省の強引な姿勢が問われている。【日野行介】