(筆洗)「日本はどの程度まで、独自に物事を決められるのか?」との問い - 東京新聞(2016年12月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016121602000141.html
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ロシアのプーチン大統領は、遅刻魔である。外国の首脳や外相を、三、四時間待たせたこともある。
英紙ガーディアンによると、彼が遅刻を一時間に収めれば「敬意の表れ」だそうで、ローマ法王との会談では、五十分の遅刻だった。さて、安倍首相が故郷で開催するほど熱を入れた首脳会談はといえば、予定よりも二時間八分遅れての開始。首相は心中穏やかでなかったかもしれぬ。
そもそも、日本とロシアの歩み自体が遅れに遅れている。戦後七十一年たっても平和条約は結ばれていない。国交を回復させた日ソ共同宣言の署名からも六十年。両国の間には領土問題というトゲが刺さったままだ。
日ソ共同宣言をめぐる交渉では、ソ連側が北方四島のうち歯舞、色丹だけの引き渡しを提案し、日本側もそれで妥結しようとした。だが、米国から「ならば、我々は沖縄も返さぬ」と迫られたこともあり、日本政府は断念。問題は迷路に入り込んだ。
米ソ冷戦。その終結後も緊張をはらむ米ロ関係。そうした構図の中で、米国と歩みを共にしてきた日本。プーチン氏が訪日を前に発した「日本はどの程度まで、独自に物事を決められるのか?」との問いには、六十年前の経緯を踏まえ、日米関係をにらんでの鋭いトゲが潜んでいよう。
このトゲを、どう抜くか。安倍首相はプーチン氏を驚かせるようなトゲ抜きを持っているかどうか。