不戦71年 思い同じ 終戦の日「深い反省」響いた - 東京新聞(2016年8月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081602000123.html
http://megalodon.jp/2016-0816-1312-23/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081602000123.html

「不戦、平和への思いの強さ感じた」−。終戦記念日の十五日、日本武道館(東京都千代田区)で開かれた全国戦没者追悼式に参加した遺族らは、天皇陛下がお言葉で、戦後七十年だった昨年の追悼式と同様、「深い反省」を繰り返したことに心を動かされた。この日は各地で戦没者をしのぶ集会などがあり、多くの遺族が参加。陛下の平和への思いをどう受け止め、今後本格化が予想される改憲論議をどう考えるのか。 =<1>面参照
式典に参列した沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の遺族、奥田千代さん(74)は、お言葉に感動した一方で「安全保障関連法が成立して、自衛隊が海外で活動できるようになり、その反省は生かされているのだろうか」と思った。戦争で両親を亡くし、故郷は米軍基地となった。「今も沖縄では、遺骨と不発弾が出てきて、県民は戦後をずっと引きずっている」と訴えた。
ミャンマーで戦死した父親の出征後に生まれたため、父親の顔を知らないという長崎市の中尾昭子さん(74)は今年初めて式典に足を運んだ。お言葉について「昭和天皇の時代の戦争だが、責任を感じられているのでは。八十歳を超えた今、お言葉に込めた強い思いがあるのだろう」と推し量った。
埼玉県鴻巣市大塚実さん(82)は「天皇のお言葉は例年と変わらない感じを受けた。不戦、平和への思いが人一倍強いお方だ」と感じた。父親を戦争で亡くした練馬区の芹ケ野(せりがの)憲一さん(73)は「深い反省」について「お立場上、政治的なことは言及できなくても、その言葉には相当の重みがある」と話す。
日本武道館の周辺であった追悼式典などにも、多くの遺族が参加した。政治家の靖国神社参拝に反対してきた「平和遺族会全国連絡会」は千代田区で集会を開いた。参加した相模原市の石田初枝さん(86)は兄がミャンマーで戦死。「市民が戦争で殺されていく時代に戻りつつある。とんでもないこと。七十年間戦争がなかったのは(憲法)九条の力が大きい」と強調した。
千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れた山田尚子さん(79)=千葉県松戸市=は、戦争経験者が減っていく中で「戦争を知らない政治家が、安保法制の成立など思うように政治を進めているようにみえる。私たちがいなくなったら日本はどんどん怖い方向に進むんじゃないか」と懸念を示した。
日本武道館近くの戦傷病者史料館「しょうけい館」を訪れた佐賀市の山口貢さん(77)は父親がミャンマーで戦死しており、「戦争だけは絶対いかん」と主張する。最近の中国の強硬姿勢に不安も感じているといい、「安定のために日本も強くならないといけないんだろうが、九条まで改正するべきかどうか悩ましい」と話した。
一方、靖国神社の参道では、新憲法制定などを推し進める「日本会議」などによる追悼集会が開かれた。
埼玉県越谷市の越川進さん(69)は「米国に押し付けられた憲法は改正しないといけない。特に内容が曖昧な九条を改正し、防衛力保持を明記すべきだ」と話した。