大分・別府署が隠しカメラに批判や懸念の声 野党支持団体の敷地内に - 西日本新聞(2016年8月4日)

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大分県警別府署員が6月の参院選公示直前から選挙期間中にかけ、社民党の支持組織が管理する別府市内の建物敷地内に無断でビデオカメラを設置し、人の出入りなどを録画していたことが3日、分かった。県警は、許可なく敷地内に入ったことに関しては建造物侵入罪に当たる可能性があるとして、党関係者に陳謝。ただ、不特定多数の出入りの無断撮影が必要だったかについては「今後調査する」というにとどまっている。
県警や社民党関係者によると、隠しカメラが設置されたのは別府地区平和運動センターや連合大分東部地域協議会が入居する別府地区労働福祉会館(同市南荘園町)の敷地内。参院選の選挙期間中、社民党比例代表候補の支援拠点があり、大分選挙区に立候補していた民進党現職を推薦する連合大分の関係者らも出入りしていた。

連合大分の関係者「組合をつぶす圧力だ」と憤り

カメラは参院選公示(6月22日)前の同18日夜、同署刑事課員2人が設置。1台は木の幹に、もう1台は斜面にあったブロックの穴の中に設置されていた。同23日に業者が草刈りをした際に発見。録画映像には、電池を入れ替える署員の姿が写っていたという。
設置は署の判断だったといい、県警刑事企画課は「個別捜査の一環で、特定の対象者の動向を把握するため」と理由を説明。県警の小代義之刑事部長は3日、「他人の管理する敷地内に無断で立ち入ったことは、不適切な行為だった」とコメントした。
署幹部は6月26日に社民党関係者に「申し訳ない」と陳謝しているが、連合大分の関係者は「不特定多数を狙った行為で許されない。組合をつぶす圧力だ」と憤っている。
7月10日に投開票された参院選大分選挙区では、連合大分が推薦し、社民、共産両党の支援を受けた民進党現職がわずか1090票差で自民党新人を破り3選を果たした。社民の比例候補は落選した。

無断撮影に批判、懸念

大分県警の捜査員が参院選公示直前、社民党民進党候補者の支援組織が入居する施設の敷地内に無断でビデオカメラを設置していた問題を巡り、識者や市民からは「言語道断だ」「見過ごせない」と批判や懸念の声が上がっている。
故意か、過失か−。県警側は「敷地外の草むらと勘違いした」と過失を主張している。だが、カメラの設置場所は石垣などで囲まれた敷地内の樹木。プライバシー問題に詳しい高山巌弁護士(大阪)は「敷地の境界が明確ならば建造物侵入罪が成立する可能性が高い」という。
無断撮影についても「捜査には一定の制限があり、許されるのは、具体的な犯罪が行われていて、証拠保全の必要性や緊急性がある場合など一部に限られる」と指摘。「公道でも『撮影されない自由』があり、敷地内はよりプライバシー度が高い。警察の正当化は難しい」とみる。


上智大の田島泰彦教授(メディア法)は設置時期に注目。「設置したのが公安ではなく刑事ということもあり、選挙違反の捜査と推測できる。野党の施設の出入りをビデオカメラで監視する行為の背景には、政権や与党への政治的配慮も見え隠れする」と述べた。
大分県内で長年、市民運動を続けている小坂正則さん(62)=大分市=は「警察による監視が当たり前という社会で本当にいいのか、ということを考えさせられる問題だ。労働組合の活動や市民運動の萎縮につながる。このまま放置すべきではない」と話している。