最低賃金上げ 生活できる額だろうか- 東京新聞(2016年7月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016072802000140.html
http://megalodon.jp/2016-0728-0953-31/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016072802000140.html

二〇一六年度の最低賃金(時給)の目安が全国平均で二十四円引き上げられることが決まった。上げ幅は首相が目指す「3%」と政権の意向に沿い過去最大だが、生活できる賃金水準にはまだ遠い。
最低賃金は労働者の生活安定のため、国が定める一時間あたりの賃金の最低額だ。アルバイト、パートなど非正規含め原則、すべての労働者に適用される。
最低賃金すれすれで働く人は非正規労働者に多く、厚生労働省によると全国で四百万人以上という。最低賃金引き上げは働く貧困層の生活底上げに直結し、格差を是正するためにも有効だ。
毎年一回、労使代表が入る厚労省の審議会で議論し目安額を示す。これを基に地方の審議会が都道府県ごとの最低賃金を決める。
最低賃金が目安通り改定されれば全国平均は八百二十二円となり、すべての地域で七百円以上になる。引き上げ額、率ともに現行方式になった〇二年度以降最大だ。
政府の「一億総活躍プラン」には、最低賃金を年率3%程度をめどとし全国平均千円を目指すことが盛り込まれた。安倍晋三首相は参院選後、「3%の引き上げに向け最大限の努力を」と関係閣僚に指示した。
とはいえ、日本の最低賃金は欧州などと比べて低い。経済協力開発機構OECD)の統計によると日本の最低賃金は、欧州諸国と比べ実質六〜七割程度にとどまっている。
審議会で労働組合側は六年前に閣議決定された「早期に全国最低八百円、(二〇年までに)全国平均千円」を実現するべく、五十円程度の引き上げを主張していた。
連合の一三年の調査によると、最低限の生活を営むのに必要な賃金水準は、全国平均で時給九百三十三円。最も高い東京は同千九十円だった。現在の水準はこれを大きく下回る。最低の鳥取、高知、宮崎、沖縄の四県の月収はフルタイムで働いても十二万円余だ。
依然として、地域間の格差も大きい。最高と最低の差は二百円以上。都市部への人口集中を食い止めるには、賃金格差の是正は欠かせない。
一世帯当たりの所得中央値は一九九八年をピークに年間百万円以上、下がっている。民間給与実態調査によると、年収二百万円以下のワーキングプアは一千万人を超える。これでは消費も伸びようがない。
働きがいのある賃金水準を早期に実現してほしい。