最低賃金の引き上げ それでもまだ低い水準だ - 毎日新聞(2017年7月27日)

https://mainichi.jp/articles/20170727/ddm/005/070/046000c
http://archive.is/2017.07.27-001121/https://mainichi.jp/articles/20170727/ddm/005/070/046000c

2017年度の最低賃金(最賃)の引き上げ幅の目安は全国平均で25円、引き上げ率は2年連続で3%相当と決まった。
目安通り改定されれば全国平均で時給848円となる。25円の上げ幅は、日額から時給に変更した02年度以降で最大の伸びだ。
政府は「ニッポン1億総活躍プラン」で最賃の毎年3%程度の引き上げを盛り込んでおり、中期目標である「全国平均1000円」の実現に向け一歩前進したことにはなる。
しかし、もともと日本の最低賃金は先進諸国の中では低く、フランスやオーストラリアの6〜7割の水準だ。今回の引き上げでも、フルタイムで働いた人の年収は160万円程度に過ぎない。政府は「働き方改革」で残業時間を抑制しようとしている。少しばかり最賃が上がっても、働く時間が減ることで手取り収入は増えないという人は多いだろう。
最賃の引き上げは必要だが、それより少し高い賃金を得ている非正規雇用労働者の賃上げに直接つながるわけではない。働いても生活が苦しい「ワーキングプア」を解消するためには、従業員全体の賃上げに波及させる必要がある。
中小企業の中には最賃に近い水準で働いているパート従業員が多く、最賃引き上げが経営を圧迫することへの懸念が強い。中小企業に生産性向上の努力が求められるのはもちろんだが、大企業に適正な取引慣行を守らせることも必要だ。
大企業が優位な立場を利用して、下請けに納入価格を不当に低くするなど不利な条件を押しつける例は少なくない。経済全体の好循環をもたらすには、中小企業の経営を守らなければならない。
引き上げ額の目安は、47都道府県を地域の経済情勢などでA〜Dの4ランクに分けて決めている。Dに属している宮崎と沖縄は22円の引き上げで時給736円となるが、最も高い東京の958円に比べて222円も低い。隣接県同士でも100円以上差があるケースは珍しくない。地域間格差の是正も課題だ。
働き方改革の柱の一つは非正規雇用の待遇改善であり、最賃引き上げはその土台だ。同一労働同一賃金の実現などに向け、政府はさらに取り組みを進めなければならない。