(筆洗)その曲が朝鮮半島の南北分断の悲しみを歌う「イムジン河」だった - 東京新聞(2016年7月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016070702000130.html
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当時の京都では日本人と在日朝鮮人同士のけんかやもめごとが絶えなかったそうだ。一九六〇年代の話である。
なぜ、うまくやれないのか。関係を良くしたいと、ある日本人少年がサッカーの対抗試合を計画した。試合を申し込みに行った、朝鮮中高級学校の教室から美しいメロディーが流れてきた。
その曲が朝鮮半島の南北分断の悲しみを歌う「イムジン河」だった。少年とは作詞家でこの曲を訳し、加藤和彦さんらのザ・フォーク・クルセダーズに提供した松山猛さん(69)である。「そのどこかものがなしいメロディーはぼくのたましいの純情を射ぬいてしまいました」(『少年Mのイムジン河』)と書いていらっしゃる。
イムジン河水清く とうとうと流る 水鳥自由に群がり飛び交うよ>。フォークルがコンサートで初披露したのが六六年というから今年、五十年だが、相変わらず南北を隔てる川は深い。北朝鮮が六日、その歌の川、臨津江(イムジンガン)の上流のダムを予告なしで放流したと、韓国が反発している。
七年前、下流で韓国住民が亡くなる事故を踏まえ、放流時には事前通報することで合意したはずだが、北朝鮮側はどうした事情か守っていない。北朝鮮のミサイル発射など、強まる南北対立が背景かもしれぬ。
おりしも七夕である。南北の牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ)の「星合」を助ける、カササギの<群がり飛び交うよ>を短冊に願う。