(筆洗)EUからの離脱と、国内の分断。「英国人は何をしたのか、闇の中に入ってしまったか」 - 東京新聞(2016年6月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016062502000129.html
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かつて世界中に領土と植民地を持ち、「太陽の沈まぬ国」と言われた大英帝国。それを揶揄(やゆ)した、こんなジョークがある。「なぜ、大英帝国には陽が沈まぬのか? 闇の中で英国人が何をするか、神が信用なさらぬからだ」
英国はEUから離脱すべきか否か。陽の沈まぬような国民投票の長い長い一日が終わり、夜を徹しての開票作業の末に出た答えは、「離脱」だった。
EU離脱は数年前まで、英政界にあって一部の右派が唱える極論だった。しかし、キャメロン首相は、与党支持層での反EU感情の高まりを受けて、国民投票の実施を約束した。それはあくまでも「ガス抜き」のためだった。
離脱をちらつかせEUとの交渉を有利に運び、反EU派も取り込んで選挙に勝つ。国民投票では「残留」という現実的選択がなされ、政権は盤石に…そんな筋書きのはずだった。
だが、ガス抜きのガスがいかに危険か、首相は想像できなかったのだろう。それは激しく燃え上がり、筋書きを燃やしてしまった。感情をあおる言葉が飛び交い、世代や収入、地域、さまざまな形の対立があらわになった。「分断された英国か、寛容で自由な英国か」と首相は残留を訴えたが敗れ、首相の座から降りることになった。
EUからの離脱と、国内の分断。「英国人は何をしたのか、闇の中に入ってしまったか」。そう自問する英国人も多かろう。