参院選へ 18歳選挙権 新しい主権者への期待 - 毎日新聞(2016年6月18日)

http://mainichi.jp/articles/20160618/ddm/005/070/044000c
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民主主義の裾野を広げる、記念すべき一歩である。
選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法があす施行される。22日の参院選公示からすべての選挙に適用され、約240万人が新たな有権者となる。
若い世代の声はこれまで政治に十分反映されてこなかった。政治と若者の距離を縮める大きなきっかけとなることを期待したい。
選挙権年齢の引き下げは終戦後の1945年に25歳以上から20歳以上に引き下げられて以来だ。この時は女性の参政権も初めて認められた。
18、19歳の新有権者は全体からみれば約2%にとどまる。だが、高校生の一部が投票に参加するように、もたらす影響は比率以上に大きい。
政党も変化に対応し始めている。参院選公約にいくつかの党が経済的に苦しい学生のための給付型奨学金の創設や検討を盛り込んだ。
各党は漫画を活用した若者向けパンフレットを作ったり「女子会」と名付けて若い女性と討論したりしている。いささか付け焼き刃な印象は否めないが、若者の評価をこれまで以上に気にしている表れだろう。
高校は有権者として必要な素養や知識を生徒に教える主権者教育への取り組みを進めている。
文部科学省によると、2015年度に全国の高校の9割以上が選挙の仕組みなどを授業で取り上げ、3割が模擬選挙などを行った。多くの高校や教育委員会はこれまで教育現場に政治や選挙を持ち込むことに慎重だった。評価できる動きだ。

一方で、改革に伴う不安もある。

最近の国政選挙では低投票率傾向が目立つ。とりわけ若い世代の選挙離れは深刻だ。投票率が52・66%だった14年衆院選で、20代は3割台に落ち込んでいる。大学入試世代でもある新有権者が流れを変えていけるのか、危ぶむ声は強い。
社会全体がまだ18歳の若者を主権者として認知していない面もある。
政府は集会など学校外の政治活動への高校生の参加を容認した。にもかかわらず、一部の高校は学校に事前に届け出るよう規制している。
若い世代が政治に主体的に関わり、社会もこれを受容する。「18歳選挙権」で政治を前に動かすためにはそんなサイクルが欠かせない。
参院選に向けて、大学生が候補による討論会の開催を企画しているような動きもある。政治に参加していく方法は多様である。
どの政党や候補が、自分たちの将来を責任を持って考えているのか。新有権者はぜひ、熟慮のうえで初めての1票を投じてほしい。