甘利氏不起訴 灰色の口利き利得を説明せよ - 読売新聞(2016年6月1日)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20160531-OYT1T50138.html

あくまで、刑事責任は問えないということだ。疑惑が晴れたわけでは決してない。
甘利明・前経済再生相を巡る現金授受問題で、東京地検特捜部は、あっせん利得処罰法違反容疑で告発されていた甘利氏と元秘書2人を、いずれも不起訴とした。
不起訴理由は「嫌疑不十分」であり、灰色の部分は残っている。甘利氏は、不透明な現金授受について、きちんと説明する責任があることを忘れてはならない。
甘利氏と元秘書が、千葉県の建設会社側からの依頼で都市再生機構(UR)との補償交渉に口利きをし、謝礼として現金計600万円を受け取ったという疑惑だ。
あっせん利得処罰法違反に問うには、政治家や秘書が権限に基づく影響力を行使して口利きをした見返りに、報酬を得ていたことを立証する必要がある。
特捜部は、甘利氏本人や元秘書、URの担当者らから事情聴取し、関連書類を押収したが、影響力の行使に関する具体的な証拠を得られなかった。不起訴しか選択肢はなかったということだろう。
ただし、元秘書らが建設会社側の求めに応じ、UR側と面談を重ねたのは事実だ。建設会社側から再三、接待も受けていた。こうした癒着ぶりを踏まえれば、甘利氏側への現金提供には、やはり不透明さが拭えまい。
不起訴を受け、甘利氏は「あっせんに該当するようなことは一切していない旨を説明し、受け止めてもらえたと思っている」などとするコメントを発表した。
甘利氏は1月に経済再生相を辞任した際に記者会見を開いて以降、体調不良を理由に国会にも姿を見せていない。弁護士による調査結果も公表しないままだ。
甘利氏は調査について、「捜査への配慮から中断していた」と釈明している。弁護士は「検察審査会への申し立ての有無など、状況を見ながら調査を再開したい」との意向を示しているという。
「政治とカネ」に関し、国民の不信をこれ以上増大させないためにも、甘利氏は一刻も早く公の場で、説明責任を果たすべきだ。
UR側の対応にも疑問は多い。元秘書との面談後、建設会社に2億2000万円の補償金を支払う契約を結んでいた。URの担当職員は、建設会社側から度重なる飲食接待も受けていた。
URは国と自治体が出資する独立行政法人だ。多額の支出に、不適切な点はなかったのか。徹底的な検証が必要である。