甘利氏不起訴 釈然としない結末だ - 東京新聞(2016年6月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016060102000136.html
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「不正な口利きはなかった」−。自民党甘利明前経済再生担当相を東京地検は不起訴と判断した。現金授受の一切が浮かび出ていただけに釈然としない結末だ。改めて本人から説明を求めたい。
お金のやりとりは明白だった。まず、二〇一三年八月に千葉県白井市の建設会社の元総務担当者が、甘利氏の当時の公設秘書に現金五百万円を手渡した。
甘利氏本人にも同年十一月に大臣室で現金五十万円、さらに一四年二月には甘利氏の地元である神奈川県大和市の事務所で五十万円を手渡した。合計すると、六百万円になる。
建設会社が甘利氏側に大金を渡した理由もはっきりしている。元総務担当者がこう本紙に話している。建設会社は県道工事をめぐって、都市再生機構(UR)と補償問題を抱えていた。元総務担当者はこの問題で甘利氏の元秘書に口利きを依頼した、と。
実際にその後、URから建設会社に約二億二千万円の補償契約が決まった。現金五百万円の提供はこの直後の出来事である。口利きの見返りだったとすると、実にわかりやすいストーリーだ。
国会議員ら政治家が、口利きした見返りに報酬を受け取ることは法で禁じられている。あっせん利得処罰法だ。国などが資本金を出すURも対象だ。甘利氏と元秘書は、それに触れるのではないかと告発されていた。
だが、口利きでこの法律違反に問えるのは、「権限に基づく影響力の行使」があって、公務員に職務上の行為をあっせんしたケースである。その「影響力の行使」を具体的に立証する必要がある。これが壁になった可能性がある。
甘利氏や元秘書が不正な口利きを否定し、UR側も否定的な説明をすれば、立件のハードルを越すのはほぼ困難になろう。ただ、そうなると、甘利氏側は何もしないで六百万円を受け取ったという構図が生まれる。
甘利氏の元秘書は一五年以降も、建設会社の元総務担当者から現金の提供や飲食の接待を受けていたことがわかっている。この蜜月は何とも不可解だ。今回の不起訴判断によって、事件は幕引きとなるが、これで疑惑は解明されたといえるだろうか。
甘利氏は「中断していた調査を再開するよう弁護士に依頼した」という趣旨のコメントを出した。政治とカネの問題だ。甘利氏側が説明責任を果たす機会は、まだまだ残っている。