視点 選挙制度 議員の劣化をどう防ぐ=論説委員・与良正男 - 毎日新聞(2016年5月22日)

http://mainichi.jp/articles/20160522/ddm/005/070/024000c
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衆院選の「1票の格差」是正を目指し、小選挙区を当面「0増6減」することなどを盛り込んだ改正関連法が成立した。これにより衆院の定数は465に削減され、戦後最少となる。
再三批判してきたように抜本改革を先送りする策だ。これで一段落ではない。しかも議員自らが取り組まなくてはならない課題は他にも山積している。
少し違う角度で振り返ってみたい。今度の改革は「今の格差は違憲状態」とする最高裁判決に対応するのが主目的だった。そのためには、例えば全面的に比例代表選挙とするなど現行の小選挙区比例代表並立制自体を変える方法もあった。だが、そうならずに議論は制度存続を前提として進んだ。なぜか。
自民、民進など主要政党が見直しを求めなかったからだ。つまり今後、政界に大変動が起きない限り、今の制度は当分続く可能性が高いということだ。
小選挙区中心の現制度の弊害が指摘されて久しい。賛成か反対か、単純に二分化するような政治が横行していること。党執行部に権限が集中し、最近の自民党に見るように活発な党内議論がなくなったこと……。
最大の問題は「議員の質の劣化」だろう。すべて制度が原因だとは言わないが、その時々の風を頼りに「○○党だから」という理由だけで当選する議員が増え、個々の資質が軽視されがちになっているのは確かだ。
最近では「政界の2012年問題」と呼ぶそうだ。「育児休業を取る」と話題を振りまきながら女性問題が発覚して辞職した議員をはじめ、自民党が政権復帰した12年の衆院選での初当選組の中に、与野党通じてあきれるような議員が多いことを指す。党が候補選びの段階で資質を見抜けなかった証左である。
1票の格差」を是正するには、人口の少ない地方の定数はそのままにして都市部の議員を増やす方法もある。
これも当初から除外されたのは、自民、公明、旧民主3党が消費増税に伴い、「自ら身を削る」と定数削減を約束したからだけではない。総定数増には多くの国民が「こんな国会なら、これ以上、議員は要らない」と拒否反応を示すはずだと政党側も承知しているからだろう。
だが、なぜ「議員を増やしてもいい」とならないのか。今一度考えないといけない。与野党は候補者発掘の裾野を広げるなど候補者公募の方法を見直すとともに、時間をかけて候補者を育成する努力がまず必要だ。

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関連法成立を機に選挙制度をいくつかの視点で考える。