http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016043002000235.html
http://megalodon.jp/2016-0502-0917-58/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016043002000235.html
安全保障関連法施行で戦争放棄を掲げる憲法九条の精神が揺らぐ中、外国人や海外に住む日本人に「九条を守れ」との声が広がっている。「平和を願う九条は真珠のような存在」「平和国家という財産を捨てれば、現地の日本人を危険にさらす」。外国で実際に暮らし、離れて日本を見た立場から、七十年戦争をしなかった国の「平和憲法」に価値を見いだしている。 (寺岡秀樹)
「九条は平和を願う精神が反映され、真珠のようなもの。他に類がなく、光った存在です」
カナダ国籍で、二〇一一年に来日した日本基督教団職員デイビット・マッキントッシュさん(55)=東京都杉並区=は流ちょうな日本語で訴えた。神奈川県座間市の主婦鷹巣直美さん(39)が立ち上げた市民団体「憲法9条にノーベル平和賞を」(相模原市)実行委員会の署名に協力している。
中学まで日本で育ち、カナダに帰国後、平和問題に関心を持った。〇五年、カナダ人や在住日本人らでつくる「バンクーバー九条の会」の発起人に。移り住んだトロントでも九条の会を立ち上げた。バンクーバーの会員は約二百人を超えている。
再び来日した後は、平和問題の勉強会での通訳などで九条に関わった。カナダの外相が二月、安保関連法を歓迎したことを受け、バンクーバー九条の会などは発言の撤回を求める抗議声明を出した。「理想だけではいけないが、理想を掲げることなくしては、人類は悪い方向にしか進まない。多くのカナダ人に九条を知ってほしい」
安保関連法に反対する海外の日本人らが昨年八月に結成した「OVERSEAs(オーバーシーズ)」には、約二週間で八十四カ国、約千二百人から賛同署名とメッセージが集まった。
「OVERSEAs」は現在、ニューヨークやパリなどで九条の精神を広める活動も行っている。発起人の武井由起子弁護士(48)は中国に赴任した経験などから「いかに自分が『九条の防弾チョッキ』に守られていたのか分かった。アメリカと同類とみなされ、テロのターゲットになるリスクが高まるなど、安保関連法の一番の当事者は海外在住日本人だ」と訴える。
鷹巣さんは五月三日の憲法記念日を前に「世界の人が九条の精神を支持し、一緒に広めてくれていることは心強い。インターネットが発達し、一人一人が意見や考えを発信できる時代。『外交』はもはや国の専売特許ではなく、市民によって国より強力な『外交』を行うことができる」と話している。
◆「OVERSEAs」に寄せられたメッセージ(抜粋)
「戦後、日本が1人の戦死者も出さなかったことを外国の人は知っている(から)私たちは海外で安全に暮らせる。国民を守るという意味で本当の安全保障」(男性・オーストラリア在住)
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「日本人であることに憎しみの目を向けられたことはない。どの宗教、どの国も攻撃しない9条の精神に守られた国だから」(元青年海外協力隊員・中南米在住経験)
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「安倍自民の進める安保法制、憲法破壊を許すわけにいかない。自民党の掲げる憲法改悪・破壊草案は立憲主義という人類が多大な血を流して獲得した智慧(ちえ)に逆行するもの。かつて満州国と呼ばれたこの土地で中国人たちに受け入れられ、支えられている私自身の果たすべき役割」(男性・中国在住)