秘密の監視 看過できぬ国会軽視 - 朝日新聞(2016年4月28日)

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安倍内閣特定秘密保護法の運用状況について、年1回の国会報告を閣議決定し、衆参両院議長に提出した。
3月末、衆院の情報監視審査会が特定秘密の件名について、「具体的な内容がある程度想起されるような記述」に改善するよう求めていたが、報告には反映されなかった。
その結果、「自衛隊の運用計画等に関する情報」「警察の人的情報源等となった者に関する情報」などあいまいな表現が並んだ。これでは政府の指定が適切かどうか、客観的に判断しようがない。
理解に苦しむのは、内閣情報調査室が「作業が間に合わなかった。経過説明をしながら、来年出す報告書で対応したい」と説明していることだ。
確かに、一定の情報を秘密にする必要はあろう。だとしても政府の情報は本来、国民のものだ。その国民の代表であり、政府に対する監視機能をもつ国会の改善要求を、あまりにも軽く扱っていないか。
衆院審査会の対応にも物足りなさがあった。具体的な記述への改善を「意見」として求めるにとどめ、より強い「勧告」に踏み込まなかったことだ。
今回の報告によると、昨年末時点の特定秘密の指定件数は443件で前回より61件増えた。関連文書は27万2020点で、8万点以上増えている。
特定秘密443件のうち441件が、秘密指定の有効期間を法が定める上限の5年に設定されていた。運用基準では「必要最低限の期間に限り指定」としているが、ほとんどの秘密を最長の5年に指定したことが妥当なのかどうか、ここでも客観的な評価ができない。
報告には、特定秘密を扱う人を審査する「適性評価」の状況も初めて盛り込まれた。
借金の有無や飲酒の節度、精神疾患、家族の国籍や帰化歴まで調べられ、9万6200人がクリアした。1人が不適格とされたが、その理由などは明らかにされていない。
有識者らによる首相の諮問機関、情報保全諮問会議では、不適格の理由について「プライバシーにも配慮しつつ、可能な限り明らかにするよう努めるべきだ」との意見が出た。政府は重く受け止める必要がある。
衆参両院の審査会は政府の追認機関にならぬよう、危機意識をもたねばならない。
まずは問題点を徹底的に洗い出し、政府に改善を強く求めるべきだ。形ばかりの「監視」では、国民の代表としての責任を果たしたとは言えない。