障害者差別解消法 対応要領策定 全国自治体のわずか21% - 東京新聞(2016年4月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016042802000133.html
http://megalodon.jp/2016-0428-0916-21/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016042802000133.html

四月に施行された障害者差別解消法で策定が義務づけられている対応要領を実際に作った全国の市区町村は、21%にとどまることが分かった。同法は職員が障害者に対して不当な差別をせず、合理的な配慮をするよう義務づけており、職員がどう障害者と接すればいいかまとめた文書が対応要領だ。法律に基づき障害者施策を進める市区町村が、法の趣旨を徹底していない実態が浮き彫りとなった。 (城島建治)
法律を所管する内閣府が全国の自治体にアンケートし、四月一日時点でまとめた。全国千七百四十一の市区町村のうち、対応要領を策定したのは三百七十二。
合理的配慮とは、例えば車いす利用者のために役所入り口に段差スロープを設置すること。どのような配慮が必要かは障害の種類や程度によって違うため、職員には柔軟な対応が求められる。法律は全国の市区町村に対し、自治体内で暮らす障害者や関係者らに意見を聞いた上で、対応要領を策定するよう義務づけた。
全国的に策定が進んでいない理由として、政府の対応の遅れがある。法律は、政府は自治体の対応要領策定に「協力しなければならない」と定めるが、具体的な取り組みとしては、二〇一五年十一月に県と政令指定都市の職員を集めて、説明会を開いたのみ。都内の自治体担当者も「政府に協力してもらったことはない」と話す。内閣府は「自治体には対応要領をつくる義務があるので、積極的に働き掛けていく」と話す。
法律は一三年六月に成立した。施行を約三年後にしたのは、行政や民間事業者に準備期間が必要だからで、自治体は四月一日の施行と同時に対応要領の策定が求められていた。
障害者政策に詳しい慶応大の岡原正幸教授(社会学)は「対応要領を策定した自治体があまりにも少ない。職員の対応が不十分だったり、障害者との認識の違いからトラブルになるのは目に見えている。政府は早急に自治体への協力体制を築く必要がある」と指摘する。
障害者差別解消法を巡っては、内閣府が全国の市区町村に障害者の相談窓口として「障害者差別解消支援地域協議会」の設置を勧めているにもかかわらず、設置は全体の6%にとどまることも明らかになっている。同法は、協議会の庶務を市区町村が務めると定めている。
障害者差別解消法 2013年6月に成立した。国の機関、地方自治体、民間事業者に対し、不当な差別的対応を禁止した上で、合理的な配慮(その場で可能な配慮)を義務づけた。行政機関は法的義務、民間は一律に対応できないとして努力義務にしたが、民間事業者が政府から報告を求められても従わなかったり、虚偽の報告をした場合、罰則が科される。法の趣旨を周知するには時間が必要との理由で、施行は16年4月になった。

職員対応例
文京区示す
対応要領を策定した自治体のうち、東京都文京区は職員が気付きにくい不当な差別の例に「本人(障害者)を無視して支援者や介助者に働きかける」ことを挙げた。障害者の要望を受けて合理的な配慮として「(色弱者や高齢者を含むすべての人に見分けやすい色づかいをする)カラーユニバーサルデザインを踏まえ、印刷物をつくる際は見やすく、分かりやすく配慮する」と明記した。
区内に住む障害者らを対象にしたアンケートで、職員対応に差別を感じた経験や、障害者が必要とする合理的配慮の具体例を尋ねたところ、計二百四十三件の回答が寄せられ、対応要領に反映させた。
文京区のように地元に住む障害者の意見を聞いて対応要領を策定すれば、職員は対応しやすくなる。