東電に3100万円賠償命令 原発避難で双葉病院の2患者死亡 - 東京新聞(2016年4月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016042802000134.html
http://megalodon.jp/2016-0428-0914-18/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016042802000134.html

東京電力福島第一原発事故で避難を余儀なくされ、適切な医療を受けられずに死亡したとして、双葉病院(福島県大熊町)に入院していた当時九十八歳と七十三歳の患者二人の遺族十四人が、東電に計約六千六百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二十七日、東京地裁であった。中吉徹郎(なかよしてつろう)裁判長は「長時間の搬送など過酷な環境にさらされ、持病が悪化するなどして死亡した」と判断し、計約三千百万円の支払いを東電に命じた。双葉病院からの避難を巡る訴訟で、東電に賠償を命じた判決は初めて。
判決によると、二人は福島第一原発から約四・六キロの同病院に入院。原発事故が起きた二〇一一年三月十一日以降、停電した病院で低体温症や脱水症状を引き起こしたが、医師らが避難するなどしたため、治療を受けられなかった。同月十四〜十六日、自衛隊員に病院から運び出され、避難先の県内の高校体育館や別の病院で同月十六日、心機能不全と脱水症でそれぞれ死亡した。事故当時、双葉病院と系列の介護施設には患者や入所者ら約四百四十人がいたが、避難前後に約五十人が死亡したとされる。
東京地裁では患者五人の遺族が起こした同様の訴訟が係争中。千葉地裁では一四年九月、東電が女性患者の遺族に約千三百五十万円を支払うことで和解が成立している。
東電は「判決の内容を確認し、引き続き真摯(しんし)に対応する」とのコメントを出した。
◆「交通事故と同程度の額」 原告側弁護士は不満
判決後、東京都内で記者会見した原告側代理人の新開文雄弁護士は「原発事故で亡くなった苦痛は交通事故よりも大きいと主張したが、判決は交通事故死と同程度の賠償額だった。かなり厳しめの判決だと感じている」と不満を述べた。
一方で、新開弁護士が判決内容を伝えたところ、遺族の一人は「金額よりも、亡くなった経緯や裁判所の判断が分かったので納得している」と話したという。
原告側は、避難の際、九時間半にわたり約二百三十キロもの距離をバスで移動したことや、高い放射線量の中、自衛隊による救出作業が一時中断したことなど、原発事故の特殊性を主張。交通事故死で一般的とされる死亡者一人当たりの慰謝料(二千万〜二千二百万円)よりも多い三千万円を請求した。判決は、慰謝料を二千万円と算定した上で、持病などの影響を理由に二〜四割減額した。