ハンセン病法廷 最高裁は誠実に謝罪を - 毎日新聞(2016年4月5日)

http://mainichi.jp/articles/20160405/ddm/005/070/096000c
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ハンセン病患者の刑事裁判が、かつて裁判所外の隔離施設などに置かれていた「特別法廷」で一般に公開されずに開かれていた問題を巡り、最高裁が近く検証結果を公表する。
最高裁が第三者の意見を取り入れるために設けた有識者委員会は「特別法廷は、憲法が保障する法の下の平等や裁判の公開原則に反する疑いがある」との見解を大筋で示す見通しになった。
最高裁は、委員会の報告に誠実に向き合うべきだ。検証結果の公表の際は過ちについて丁寧に説明し、誠実に謝罪することが、国民の人権を守るとりでとしての責務だろう。
1948年から72年まで、ハンセン病患者の刑事被告人らの裁判計95件が、特別法廷で実施された。
世界保健機関(WHO)がハンセン病患者の隔離を否定する見解を示したのが60年だ。だが日本で、強制隔離を定めた「らい予防法」が廃止されたのは96年だった。
ハンセン病をめぐっては、療養所に隔離された入所者らが「人権侵害を受けた」と起こした国家賠償訴訟で、熊本地裁が2001年、「60年には隔離の必要性が失われていた」と認定し、違憲の訴えを認めた。
判決は確定し、政府は謝罪し元患者らの救済を図った。衆参両院も反省と謝罪の国会決議を採択した。司法だけが長年、過ちと向き合うことを避けてきたが、重い腰を上げた。
憲法は裁判の公正さを担保するため、公開の法廷で開く原則を定める。特別法廷による裁判は例外的な措置だが、ハンセン病患者の裁判は、伝染の恐れを理由に一律に特別法廷で開く運用がされていたという。
有識者委員会は「患者の裁判を一律に特別法廷で開いてきた最高裁の手続きは差別的な措置だった」と指摘するとみられている。
どういった判断で、一律の運用がなされたのか。社会に広がっていた差別が、なぜ裁判の場にまで持ち込まれてしまったのか。公表する検証では、その背景を掘り下げ、経緯をつまびらかにしてほしい。
また、公正であるべき審理に与えた影響についても、最高裁には突き詰めた検証を求めたい。
国内の新規患者はほとんどおらず、完治する病気になったにもかかわらず、ハンセン病に対する偏見は根強い。毎日新聞が療養所の入所者と退所者を対象に行ったアンケートでは、全体の77%が「病気への差別や偏見がいまだにある」と回答した。
差別や偏見を受けたとして患者の家族らが今年、新たに集団で国賠訴訟を起こしてもいる。最高裁の検証にとどまらず、ハンセン病に対する差別や偏見の解消は、私たちの社会が向き合うべき課題である。