女性指導者育成に「二つの壁」 「社会」と「思い込み」 - 東京新聞(2016年2月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/sports/list/201602/CK2016022302000129.html
http://megalodon.jp/2016-0223-0931-16/www.tokyo-np.co.jp/article/sports/list/201602/CK2016022302000129.html

日本オリンピック委員会(JOC)の女性スポーツ専門部会が作成した「ロンドンオリンピック出場女性アスリートに対する調査報告書」によると、女子選手の約80%が女性強化スタッフの増員を望み、引退後にもスポーツに関わっていきたいと考えている。女子の五輪参加選手は2004年アテネ大会以降、ほぼ半数を占めるようになったが、選手に比べ、女性指導者の割合は少ないまま。では、なぜ女性指導者は増えないのだろうか。 (森合正範)
女性が指導者になるためには二つの壁がある。「社会的背景」と「思い込み」だ。
スポーツ界は今なお、男性社会の色が濃い。JOCが主催する「ナショナルコーチアカデミー」は、各競技団体に「女性指導者の推薦」を訴えている。だが、競技団体によっては指導者の枠が少ない上、男性の希望者も多く、女性にまで席が回ってこないことがあるという。男性に比べて、女性が指導者教育を受ける機会が少ない現状がある。
また、女性が家庭を持ったとき、男性指導者が「家庭や子育てが大変でしょう」と気を使って指導者役を引き受けることで、逆に彼女らのチャンスをつぶしているケースもあるそうだ。
もう一つは女性自身の思い込み。女性スポーツ研究センター長で順大の小笠原悦子教授(57)は「指導者として、男性より能力が劣ると思っている人もいる」と残念そうに話す。昨年9月、女性の指導者を増やし、資質を高めるため、国内で初めて「女性コーチアカデミー」を開催した。その理由を「指導者になる教育を受ける場を設けることによって、理論、知識に裏付けされた自信をつけてあげたかった」と説明する。
女性選手の場合、日々の食事によるエネルギー摂取が不足すると、骨を強くする女性ホルモンの「エストロゲン」が分泌せず、月経が止まる。低骨密度状態になり、将来的に骨粗しょう症のリスクが高まるといわれている。
ロンドン五輪出場の女子選手のうち、約65%が女性特有の身体的問題が競技に影響を及ぼすと感じたことがある。このような専門知識も女性指導者なら男性よりも相談に乗りやすいなど、利点は多い。
小笠原教授は「女性コーチアカデミー」の参加者に対して「この状況を変えるには彼女たちがロールモデル(手本)になること。自信を持つこと。そうすれば後輩たちも『私にもやれるんだ』と女性指導者が増えていく」と意識改革を訴えている。