「愛と戦争」描き続けた思い かるた展示や紙芝居披露:神奈川 - 東京新聞(2015年11月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201511/CK2015112402000141.html
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版画や絵本を手掛ける茅ケ崎市の作家、古知屋(こちや)恵子さん(46)が「愛と戦争」をテーマにした個展を来月6日まで、同市中海岸2のギャラリー街路樹で開いている。「戦争かるた」と、日常の幸せを描いたポストカードを展示し、戦争の矛盾を表現した絵本を紙芝居で披露。古知屋さんは「戦争では、愛国心を強要され、個人的な愛は否定される。愛のために戦うなんておかしくないですか」と問い掛ける。 (吉岡潤)
古知屋さんは多摩美大で学び、ずっと「日常のささやかなこと」を描き続けてきた。戦争を強く意識して作品に取り込むようになったのは、二〇〇一年「9・11」の後。対テロ戦争に突き進む米国、それを支援する日本政府のさまに危機感を覚えた。「戦争は日常の小さな幸せを一瞬にして奪ってしまう」
〇二年、「戦争かるた」を作った。「う=失った日常二度と戻らない」「ち=力ずく かえってテロをふやしてく」「ふ=武器持つな そういうお前は核をもつ」「む=無関心 権力者には喜ばれ」。戦争の非情さ、不条理を皮肉を交えてあぶり出した。
東京電力福島第一原発事故が発生した一一年には、「原発かるた」も作った。「洗濯物を干す、森の中でブランコに乗る、雨にぬれて踊る、そんな日常の風景を私は描いてきた。でも原発で事故が起きれば、全部奪われてしまうと知った。怒りが込み上げ、言葉と絵が一緒に浮かんだ」
紙芝居のタイトルは「ふたりのカノン」。登場するのは、オルゴールの曲「カノン」に合わせて踊るバレリーナと、大砲(英語でカノン)が付いた戦車に乗る兵士。互いに「カノン」と呼び合い、兵士は彼女を敵の攻撃から守ろうとする。だが、戦車が標的になり、反対に彼女は危険にさらされる−という物語だ。
古知屋さんは言う。「一方的な考えの押しつけ合いはしたくない。私はこう思うけど、どうかなあって。誰もが自分の意見を言い合えることこそ、一番の平和だから。かるたや絵本は、もやーんと、やんわり伝えるツール」
個展は、午前十一時〜午後六時。二十九日を除く毎日、古知屋さんは会場にいる。紙芝居は午後一時。戦争かるたや原発かるた、ポストカードやカレンダーを販売する。問い合わせは、ギャラリー街路樹=電0467(58)1231=へ。