(私説・論説室から)ボーダーラインを割るか - 東京新聞(2015年7月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015072902000128.html
http://megalodon.jp/2015-0729-0954-59/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015072902000128.html

ボーダーラインが寿命を左右する−。
病気の検査結果には、治療を始めるかどうかのボーダーラインが存在する。ボーダーより少しでも悪いと治療が始まり、逆に良ければ治療は見送られる。検査の数値が悪かった方が結果的に延命する場合がある。検査数値と病状といった本来連続的な関係に政策的に介入し、その効果を分析する手法を経済学で「非連続回帰デザイン」と呼ぶそうだ。
安倍政権の内閣支持率が急落した。反転上昇に躍起だが、それも一種の非連続回帰デザインだろう。支持率は30%台後半で、30%を割ると「危険水域」といわれるから、もうすぐである。首相は「国民の理解が進んでいないのは確か」と言いながら、その安保関連法案を衆院強行採決した。その報いである。
国民は十二分に理解しているのだ。限りなく違憲な戦争法案であり、隣家の火事を消すのとは訳が違い地球の裏側にまで自衛隊が戦争しに行かされることであり、子ども連れのママが炎天下の渋谷に結集して「だれの子どもも、ころさせない」と訴えずにいられない緊急事態で、戦争体験のあるお年寄りや学者や文化人や普通に平和に暮らしたいと願う市民に学生たちも加わり、もう本当に止めないと取り返しがつかなくなるということを−。
さらに政権が米国に忠誠を誓えば安泰でいられると信じていることも。だが、国民の意志は「延命許すまじ」である。 (久原穏)