「安保」参院審議 再考の府の責任果たせ - 東京新聞(2015年7月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015072802000125.html
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安全保障法制関連法案の審議が参院で始まった。「憲法違反」と指摘され、審議を重ねるほど国民の反対が増え続ける法案だ。政府・与党は一度、撤回か廃案とし、出直すことを決断すべきである。
良識の府」「再考の府」としての崇高な責任を、参院は果たすことができるであろうか。
安倍政権が、衆院での採決を強行した安保法案はきのう参院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、参院で審議入りした。きょうからは特別委員会での審議が始まり、与党側は九月前半までの参院での可決、成立を目指すという。
安倍晋三首相は答弁で、衆院での採決強行について、国連平和維持活動(PKO)協力法や有事法制を超える百十六時間の審議を行い、「熟議の後に決めるべき時には決める」として、正当化した。
しかし、国民の多くが政権の強硬姿勢を嫌悪しているのが実態だろう。石破茂地方創生担当相が言う「感じが悪いよね」である。
衆院での採決強行後に行われた報道各社の世論調査では、安保法案は「憲法違反」との答えは50%台、法案に「反対」が60%台、法案の今国会成立に「反対」が50%台、政府の説明は「不十分」が80%台に達する。
こうした結果は、報道各社の安保法案に対する支持・不支持に関係なくほぼ一致しており、国民の姿勢は厳しいと、安倍政権は素直に受け止めるべきだろう。
問題は安倍政権が、丁寧に説明すれば、国民は安保法案の必要性を「理解」し、支持してくれるだろう、と勘違いしていることだ。
参院審議では、政府側が法案内容を説明する機会を増やすため、与党の質問時間を増やすという。
しかし、世論調査で法案自体や今国会成立への「反対」が増えているのは、審議に伴い安保法案の「違憲性」や、集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で認める「反立憲主義性」を、国民が「理解」し始めたからではないのか。
首相側近の礒崎陽輔首相補佐官からいまだに、憲法の法的安定性を軽視するかのような発言が飛び出すようでは、国民の支持が得られるわけはあるまい。
戦後日本の平和主義や専守防衛政策を守ることができるのか、今や参院での審議にかかっている。
衆院カーボンコピー」と批判されて久しい参院だ。衆院の決定を追認するだけなら、存在感はない。戦後七十年の節目の年、新憲法貴族院から生まれ変わった参院にとっても正念場である。