首相、新国立では「声聞く」 安保・原発は見直す気配なし - 東京新聞(2015年7月22日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015072202000120.html
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安倍晋三首相は、新国立競技場建設計画を白紙に戻して見直すと表明した理由について「国民の声に耳を傾けた」と説明した。工費が巨額に膨らんだ前計画に対し、世論の反発が高まったことを踏まえた判断だったが、世論調査で反対意見が過半数を占める安倍政権の政策は、ほかにもある。 (高山晶一、木谷孝洋)
共同通信社が十七、十八両日に実施した世論調査で、工費が基本設計時から約九百億円膨らみ二千五百二十億円となった前計画について、どう思うか聞いたところ、見直しを求める回答が九割超。首相は調査期間中の十七日に見直しを表明した。政府高官は「異常な数字。見直すしかなかった」として、各種世論調査の結果が見直しの直接の理由となったことを認める。
首相は二十一日のBS日テレ番組でも、計画見直しについて「五輪は国民みんなの祭典。国民が主役であり、国民やアスリートから祝福されなければ成功へ進めない」と、「国民」という言葉を繰り返した。
一方、共同通信世論調査では、他国を武力で守る集団的自衛権行使容認を柱とした安全保障関連法案の今国会成立には七割近く、原発再稼働には六割近くが反対。首相が八月に発表する予定の戦後七十年談話では、戦後五十年の村山富市首相談話に盛り込まれた「植民地支配と侵略」「反省とおわび」とのキーワードを盛り込むべきだとする回答も過半数だった。
しかし、首相はこれらについては、今のところ耳を傾けていない。
首相は二十一日、同番組で安保法案について「支持率にかかわりなく、私はやらなければならない」「国民、国益を守るためだ」などと、今国会での成立に重ねて意欲を示した。
原発についても、政府は原子力規制委員会の新規制基準に適合すれば再稼働させるとの方針を崩さない。戦後七十年談話をめぐっても、首相は村山談話のキーワードを入れるかどうかについて沈黙を続けている。
支持率の下落を踏まえ、新国立競技場の問題は世論に従ったが、強いこだわりがある安保法案などは別問題と判断しているとみられる。野党側からは「安保法案では国民の声は聞かないが、新国立では聞く。不思議な感じを受ける」(民主党蓮舫代表代行)との声も上がっている。